尿酸値の上昇が関連する疾病などに関する情報
毎年検診で気になる尿酸値。お酒を飲まれる方は、特に気にされていることと思います。
血液中の尿酸が7.0 mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されます。現在、日本では、食の欧米化に伴い、血中尿酸値の高い人は増加傾向にあり、痛風患者は80万人、高尿酸血症患者は400~600万人ともいわれています。ここでは、高尿酸血症に潜む様々なリスクをご紹介します。
痛風
ある日突然、激烈な痛みとともに関節がはれ上がる…。痛風は2度と経験したくないといわれるほど激しい痛みを伴います。この痛風発作は、血中の尿酸値が飽和濃度を超え、関節内に尿酸塩の結晶が生じ、白血球が異物と認識して排除しようとすることで起きる炎症反応です。
痛風になるのは95%が男性です。しかし、女性も閉経後のホルモンバランスの崩れから発症することがあるので注意が必要です。
腎障害と尿管結石
腎臓は関節に次いで尿酸の結晶が沈着しやすいことが知られています。腎臓に尿酸の結晶が蓄積していくと、ろ過機能が低下し、老廃物の排泄ができなくなります(腎障害)。これを放置しておくと腎不全となり、人工透析や腎移植といったことまで悪化してしまうことがあります。
一方、尿管結石とは、血中の尿酸が核となり、カルシウムやシュウ酸の結石が尿路にできてしまうことです。結石が尿路に流れ出ると激しい痛み(疝痛(せんつう)発作)に襲われます。5mm以下の小さな結石の場合は、大量の水を飲んで自然排出させる方法もありますが、1cm以上の場合、体外から衝撃波を結石に当てて細かく砕く(体外衝撃波破砕術)という方法が用いられます。
メタボリックシンドローム
近年、高尿酸血症とメタボリックシンドロームとの関連も指摘されてきました。米国の男女8669人を対象に、血中尿酸値とメタボリックシンドローム有病率※の関係を調査したところ、血中尿酸値の上昇に伴い有病率が上昇していることがわかりました。生活習慣病を合併することで、動脈硬化のリスクが高まり、ひいては脳梗塞や心筋梗塞につながりますので、日々の生活習慣の改善に取り組みましょう。
Choi HK, et al. Am. J. Med. 120, 442-447 (2007)
※有病率:腹部肥満、高脂血症、高血圧、空腹時の高血糖を有する人の割合
日常生活での注意点
では、高尿酸血症にならないために、日常生活を送っていく上で、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。
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食生活の改善
過度な飲食を避け、適切なエネルギーの範囲内で、1日3食、規則正しい食生活を送りましょう。その際、野菜や海藻類といったアルカリ性食品を多くとることを心掛けましょう。
また水を1日2L飲むことも推奨されています。
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アルコールは控えめに
アルコールはプリン体分解を亢進し、尿酸の排泄を抑制します。プリン体の有無に関わらず適量の飲酒を心掛けましょう。
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有酸素運動を心掛けて
メタボリックシンドローム予防のために、有酸素運動を行いましょう。激しい運動はかえって尿酸値を高めてしまいます。
以上、高尿酸血症に伴い、様々なリスクがあることをご紹介しました。
皆さんのQOL(Quality of Life)を改善するためにも、今後、さらに高尿酸血症の研究が進められることが期待されます。
尿酸値豆知識:血中尿酸値とコーヒーの意外な関係
尿酸とコーヒー、一見全く関連のないこの二つが、実は大いに関連があるのです。
日本と米国の疫学的調査によりますと、日常的なコーヒーの摂取は痛風または高尿酸血症の予防因子であるとこのことです。米国のデータによると、コーヒー1日4-5杯または6杯以上飲む人は飲まない人に比べて血中尿酸値は有意に低下していたそうです。
薬理学的な根拠はまだわかりませんが、将来コーヒーから痛風治療薬ができる日が来るかもしれません。