日焼けと美白のメカニズム
今も昔も、『美肌』は非常に関心の高いテーマです。
『美肌』は、ハリ・ツヤがある肌、弾力に富んだ肌、シミ・シワがない肌。。。など様々な肌の美しさを指している言葉と言えますが、その中でも、「白い肌」は昔から美の基準として多くの女性・男性に求められてきました。日本でも、古くは聖徳太子が生きていたころ、飛鳥時代には既に大陸から白粉などの肌を白く見せる化粧が導入された記録が残っています。
現代の日本では男性が化粧をすることは少なくなりましたが、平安時代の男性貴族や、合戦に赴く戦国大名が化粧をしていたことからもわかるように、美白へのこだわりは日本にとってなじみ深いものと言えるでしょう。
今回はそんな「美白」に関する新しいニュースをお伝えします。
美白・アンチエイジング成分として人気のフラバンジェノール®。この度、株式会社東洋新薬がフラバンジェノール®が日焼けの原因物質であるメラニンの生成を阻害するメカニズムの一部を解明したということで、第114回日本皮膚科学会総会で発表を行ったそうです。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000012067.html
日焼けの仕組み
日焼けすると肌の色が濃くなりますが、これは、紫外線を浴びることで皮膚内の色素細胞(メラノサイト)で『メラニン』という色素細胞が作られ、皮膚の細胞に蓄積されることで起こります。
まず、紫外線(UVB)を浴びると、皮膚の表皮細胞(ケラチノサイト)は「エンドセリン」*という物質を分泌します。皮膚の深層にある色素細胞メラノサイトは、このエンドセリンを受け取って初めて、メラニンの生成を開始します。
メラノサイトで生成されたメラニンは、その後ケラチノサイトに移動し、肌の色を濃くする、というわけです。
*エンドセリンは、メラニンを作る細胞であるメラノサイトに、メラニン生成の指令を伝える物質です。
さて、メラノサイトがエンドセリンを受け取るためには、メラノサイト側にエンドセリンの受容体(EDNRB)が必要になります。EDNRBは、メラノサイトに常に存在している物質ではなく、やはり紫外線(UVB)を浴びることによって、メラノサイト内で合成されることがわかっています。
つまり、紫外線を浴びてもメラノサイトでEDNRBが合成されなければ、メラノサイトはエンドセリンを受け取れず、メラニンも生成されないということになります。
過去の研究により、フラバンジェノール®にはEDNRBの合成を抑制する働きを持つことが確認されており、美白・アンチエイジング成分として注目を集めることになりました。今回の研究は、それより一歩進んで、フラバンジェノール®がEDNRBの合成機構にどのように作用するかを明らかにしたものになっています。
フラバンジェノール®のメラニンカスケードへの作用
一般に、細胞内で何らかの反応が起こる際、細胞内では各種の情報が次々に伝達され、段階的に反応が起こっています。色素細胞であるメラノサイトがメラニンを生成する際も「メラニンカスケード」と呼ばれる段階的な反応が起こっています。
メラニンカスケードにおいて、メラノサイト内では「細胞内シグナル伝達分子」と呼ばれる複数の物質が次々に活性化し、情報を伝達していきます。具体的にはp38→MSK1→CREB→MITFの順で情報が伝えられ、これによってEDNRBの合成量が増加するとのこと。そして、今回の研究により、フラバンジェノール®は、MSK1以降の連鎖反応を遮断することが明らかになったそうです。
MSK1以降の反応が抑えられれば、EDNRBの合成が抑制され、メラノサイトはエンドセリンを受け取れなくなり、メラニンも作られなくなる、とても複雑ですが、面白い仕組みです。
メラニン生成の仕組みは大変複雑ですが、だからこそメラニンカスケードの各段階で「日焼け」を防止できる可能性があるとも言えそうです。
今回はフラバンジェノール®をご紹介しましたが、他にもビタミンC誘導体、アルブチン、コウジ酸…など美白成分には様々なものがあり、それぞれが全く別の仕組みによって美白効果を発揮しています。美白以外にも保湿・保水効果があったり、代謝を高める効果があったり、様々な効果を併せ持つ成分もあります。
それぞれの成分の特徴を知り、上図に美白に取り入れていきたいものですね。