あなたの家族は大丈夫?痛風と遺伝子の関係
普段食べ過ぎや運動不足を自覚されている方にとって、少し気が重いイベントと言えば、健康診断ではないでしょうか。体重や体脂肪のような普段から測れる指標以外にも、中性脂肪、血糖値、AST(GOT)やALT(GPT)などの専門的な指標まで、自分の健康状態がまる見えになる、少し憂鬱で、でも注意したいイベントですね。
中でも、中年に差し掛かった頃から気になってくる数値の1つが尿酸(UA)です。男性の場合、この尿酸の基準値は4.0~7.0となっていて、特に8.0を超えるような場合だと、「風が当たっただけでも痛い」と言われる痛風になる危険性が高まります。
尿酸が「プリン体」と呼ばれる物質から作られることは広く知られています。高い尿酸値を抑えるため、プリン体が多いレバーなどの食品を控えたり、「プリン体カット」ビールに切り替えたりされている方も多いのではないでしょうか。
痛風になりやす人、なりにくい人
お酒をたくさん飲んだり、プリン体の多い食品をよく食べたり、という方の中にも、尿酸値が高い人と低い人がいることが知られています。尿酸値は確かに食生活や運動習慣に影響されるのですが、遺伝の影響も大きいことが、近年明らかになってきました。
痛風は、一般に、体内での尿酸の産生量と排泄量のバランスによって、尿酸産生過剰型、尿酸排泄低下型の2つのタイプに分かれています。両方の性質を併せ持った混合型も合わせて、3つの痛風タイプのうち、どのタイプの痛風を発症する可能性が高いかは、遺伝子によって決まっています。
痛風の発症に関わる遺伝子はこれまでにも複数報告されていますが、今年2月、日本の研究グループによって、遺伝子が5つ発見されました。
この研究は、防衛医科大学校の松尾洋孝(まつお ひろたか)講師をはじめとした、国内の16研究施設の40人の研究者や医師らによる共同研究で、2月2日付の英医学誌Annals of the Rheumatic Diseasesオンライン版で発表されました。
記事によると、新たに発見されたとして発表された遺伝子は、ABCG2 、SLC2A9、MYL2-CUX2、GCKR、CNIH-2の5つ。それぞれ異なる機構で、痛風の発症に関わりを持っています。
痛風発症のカギを握る遺伝子の変異
更に、痛風に関わる個々の遺伝子がどのような変異を持っているかによっても、痛風発症のリスクは変化します。
例えばABCG2は尿酸の排泄に関わる遺伝子ですが、こちらの記事によると、この遺伝子が持つ変異の種類によって、痛風の発症のリスクが数倍~10倍程度まで上下するということです。
この記事では、遺伝子変異の有無、肥満、飲酒量による病気発症リスクの違いについても述べられており、
病気の発症にかかわる要因の影響度「人口寄与危険度割合」は、
- ABCG2の変異遺伝子を持っている人は29.2%
- BMI25以上の肥満の高尿酸血症発症への影響力は18.7%
- ヘビードリンカー(1週間のアルコール摂取量が196グラム(日本酒換算で約9合)以上)は15.4%
だったと伝えています。
ABCG2遺伝子多型解析は、まだ健康保険適用ではありませんが、全国の医療機関で検査オーダーできるようになっているそうなので、尿酸値が気になっている方は、一度検査を受けてみるのもよさそうですね。
今回ご紹介した記事などから、痛風の発症には遺伝子の影響が大きいことがわかりました。
とはいえ、痛風が、食生活が質素だったころの、明治以前の日本には存在しなかった病気であることは事実。食生活の影響も大きいことも自覚して、痛風とは無縁の生活を送りたいものですね。