最近よく耳にする『トランス脂肪酸』とは?
“マーガリンは危険!”、このような話を耳にしたことありませんか?この話、実はマーガリンに多く含まれるという『トランス脂肪酸』の存在が原因のようです。では、トランス脂肪酸が多いとなぜ危険なのでしょうか。日本人の摂取量や気をつけるべき点などを、まとめてみました。
トランス脂肪酸って何?
脂肪酸にはたくさんの種類がありますが、これらは炭素の二重結合がない飽和脂肪酸と、炭素の二重結合がある不飽和脂肪酸に分類されます。さらに、不飽和脂肪酸はその構造の違いにより、シス型とトランス型に分けられます。
トランス脂肪酸は天然の植物油にはほとんど含まれず、半固体又は固体の油脂を製造する際に行われる水素添加によって生成されます。
トランス脂肪酸が含まれる食品の代表例は、マーガリンやショートニング、それらを使うパンやケーキ、ピザなどです。
トランス脂肪酸が米国で規制対象に
平成27年6月、FDA(米国食品医薬品庁)は、トランス脂肪酸が多く含まれる部分水素添加油脂(マーガリンなどの原料)を規制の対象とすることを決定しました。今回の規制は、トランス脂肪酸の摂取量削減を目的としています。
トランス脂肪酸って危ないの?
トランス脂肪酸の取りすぎは冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症等)を増加させる可能性が高いと言われています。また、肥満やアレルギー性疾患(喘息、アレルギー性鼻炎等)についても関連が認められています。
WHO(世界保健機関)は心血管系疾患のリスク低減と、健康の増進を目的に、トランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー比1%未満に抑えるよう提示しています。
日本人の平均摂取量は意外と少ない
調査の結果、日本人の平均的なトランス脂肪酸摂取量は、1日1人当たり平均で0.92~0.96 gと推定されました。これをエネルギー量に換算した場合*、トランス脂肪酸によるエネルギー摂取量は日本人の平均総エネルギー摂取量 1900kcal/日の0.44~0.47%に相当します。
実はこの値、WHOが推奨する「総エネルギー摂取量の1%未満」というトランス脂肪酸の摂取目標を達成しています。したがって、通常の食生活を送っている場合、トランス脂肪酸による健康への影響は小さいと考えられています。
*脂肪酸1 gあたり9.21 kcalとして換算
バランスのよい食事が大事
トランス脂肪酸と同様に、飽和脂肪酸の過剰摂取も生活習慣病のリスクを高めるとされています。努力してトランス脂肪酸を減らしても、飽和脂肪酸の摂取量が増えては意味がありません。
トランス脂肪酸だけに固執しすぎることなく、脂質全体の摂取量を十分考慮し、バランスの良い食事を心がけることが大切ではないでしょうか。
発酵大麦エキスが健康生活のお手伝い
脂質や糖質の摂りすぎは、生活習慣病のみならず、脂肪肝のリスクも高めてしまいます。脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓に蓄積する病気のこと。
大麦を発酵させた「発酵大麦エキス」には、肝臓への脂肪の蓄積を抑制するとの報告があり**、今後の展開が期待されています。
**外薗ら 第67回日本栄養・食糧学会大会にて発表