お腹の健康は頭の健康?



GABAの脳への作用

脳は何かを考えるだけでなく、骨や筋肉を動かしたり、内臓の働きを制御したりと様々な「指令」を発する重要な機関です。様々な働きをするため非常に多くの栄養が必要であり、その栄養を運ぶため、脳には多くの血管が通っています。

脳が必要とする栄養は血液に溶け込んで脳に運ばれ、栄養を必要とする脳の組織と血管の間で栄養の受渡しが行われることになります。このとき、栄養に交じって不必要な物質まで受け取らないようにするため、脳の血管にある血液脳関門という機構が受け渡しできる物質を制限しています。

 

リラックスをもたらす素材として定着しているGABAですが、このGABAも血液脳関門を通過することができないため、食品から摂取したGABAは、脳には直接作用しないことがわかっています。ではなぜ、脳が大きく関わる「ストレス」にGABAが役立つかと言えば、GABAが腸に作用し、腸から脳に伸びる神経を通して脳に抑制系の刺激をもたらしているため、と考えられています。

 

パーキンソン病と腸内フローラ

パーキンソン病は、脳の一部に異常が発生することで神経伝達に支障をきたし、手足が震えたり、筋肉が固くなって動かなくなったりする病気です。バック・トゥ・ザ・フューチャーで有名な、マイケル・J・フォックスさんが罹患していることでも知られています。

パーキンソン病は進行が大変遅いため、パーキンソン病に罹患した時期を特定することは患者本人も難しいとされていますが、この病気の初期には胃腸症状、特に便秘が続くことが確認されています。また、パーキンソン病罹患者の腸内には、食物繊維や炭水化物の分解に関与するとされるプレヴォテラ属の細菌が、健康な人に比べて8割も少ないこともわかっています。

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また、最近になって腸内フローラとパーキンソン病の関係を示唆する新しい研究結果が発表されました。

パーキンソン病発症のリスクは「腸内」にあり

この記事では、脳と腸を結ぶ迷走神経を切離する手術を受けた患者とそうでない患者の間で、パーキンソン病発症率に大きな違いが見られた、としています。消化性潰瘍治療の一環として「迷走神経切離術」を受けた15,000名のデータが基になっており、調査はデンマークのオーフス大学のエリザベス・スヴェンソン博士によって行われ、米国ジャーナル誌「Annals of Neurology」で発表されているそうです。

現段階では、パーキンソン病における「迷走神経による脳と腸の直接的な繋がり」 が示されたのみで、原因や発症の機構については不明なままですが、この病気の克服に向けて今後の研究に期待が寄せられています。

 

腸は第2の脳

GABAの作用機序や、パーキンソン病との関係以外にも、腸は様々な免疫機構に関与していることがわかっています。また、腸壁には中枢神経を形成する脊髄に匹敵する数の神経が通っていることもあり、腸は第2の脳とも言われています。

腸の健康は、頭の健康、体の健康。年末年始に向けてお酒を飲んだり、美味しいものを食べたりする機会が増えますが、極端な食生活にならないよう、腸内フローラの維持改善に注意していきたいですね。


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