焼酎粕=発酵大麦



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お酒を作った後に残るもの

お酒は、発酵後の処理工程により2つに大別されます。

一つ目は、発酵を終えたもろみを絞ることにより、アルコールを含む清澄な液分を分別した(即ち、ろ過した)醸造酒です。醸造酒には、清酒、ワイン、ビールなどがあります。

もう一つが、発酵を終えたもろみに熱をかけて、揮発するアルコールや香り成分を回収した(即ち、蒸留した)蒸留酒です。蒸留酒には、焼酎、ウイスキー、ブランデーなどがあります。

醸造酒の粕として、皆さんもよくご存じなのが、『酒粕』ではないでしょうか。酒粕は清酒もろみを搾る工程で発生する米や酵母の固まりで、スーパー等では板状あるいは液状の清酒粕として売られています。最近では、粕が発生しないような液化仕込が行われていますが、昔ながらの仕込では白い板状の粕が清酒と共にできてくることになります。清酒を搾った時に発生する清酒粕は、清酒一本(1.8L)を生産する際に、約150g発生します。(逆に言うと、酒粕1kg作るのに、清酒6~7本が必要です)

酒粕は昔から食品として販売されており、漬物用(粕漬)、食用(粕汁)、あるいは粕取り焼酎の原料として利用されます。また、最近では美容品・入浴剤等の原料としても使用されています。

 

捨てるのはもったいない!焼酎粕の栄養価

焼酎は前述したように、もろみを蒸留することによって造られます。ここで、蒸留の際に揮発してお酒に移行するのはアルコールや香り成分のみであり、アミノ酸やペプチド、ポリフェノールなどの身体に良いとされる成分は揮発しませんので、蒸留後の残液(いわゆる、焼酎粕)の中に残っています。

このように、焼酎粕は、現代人にとって価値のあるものを多く含んでいるにもかかわらず、焼酎業界では厄介者として扱われ、以前は蒸留廃液と呼ばれて産業廃棄物として処分されていました。

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大麦焼酎粕は、焼酎一本(1.8L)を生産する際に、ほぼ等量発生します。この大麦焼酎粕の90%は水分ですが、粗たんぱく質は4.7%と米焼酎粕や甘藷焼酎粕よりも多くなっています。大麦焼酎粕には、アミノ酸や多糖類が多く含まれるだけでなく、大麦に由来するポリフェノールも含まれているのが特徴です。

このように、焼酎粕には原料や酵母等の微生物に由来する栄養成分をたくさん含むことがわかりましたので、焼酎メーカーでは焼酎粕を未利用資源として位置づけて、その有用性を探る研究を行うようになりました。

 

焼酎粕=発酵大麦の健康効果

焼酎粕中の成分は使用する原料によって異なります。しかし、大麦焼酎粕のように、アミノ酸や多糖類が多いなど、高栄養価でもあります。

大麦は本来栄養価が高い健康食品ですが、これが麹菌や酵母によって分解され、焼酎粕、すなわち発酵大麦になることで、さらに機能性はアップします。例えば、大麦のタンパク質からはアミノ酸・ペプチドが生成されますし、多糖類の主成分であるアラビノキシラン(食物繊維の一種)は大麦の細胞壁が酵素分解されて生成されたものです。他にも、発酵工程でクエン酸が生産されるなど、発酵大麦は栄養成分の宝庫といえるでしょう。

 

これまで厄介者だった大麦焼酎粕が、本当に宝の山になる日が来ることを信じて、我々は日々研究を続けています。

 

発酵大麦エキスの基礎知識


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