バランスの良い食生活のために1日に必要な栄養素は?「ビタミン」編
日々の食事から摂る栄養は、私たちの体を動かすエネルギーになるばかりでなく、元気に、健康にしてくれます。今回は食事から摂取できる栄養素のうち、「ビタミン」について解説します。
「バランスの良い食生活」を実現するために必要な栄養素
バランスの良い食生活のために1日に必要な栄養素は?「三大栄養素」編
人間の体は約37兆個の細胞から構成されています。細胞の主成分はたんぱく質ですが、それだけではなく、細胞の機能に合わせて様々な化学物質から作られています。細胞を作る化学物質が不足すると、その細胞は正常に働くことができませんので、細胞ごとに必要な物質というものがあるのですが、そのすべてを体内で合成できるとは限りません。
この、細胞が正常に働くために必要なのにもかかわらず、体内では合成できない(または合成量が少ない)物質のうち、有機化合物を総称して「ビタミン」と言います。体組成に必要な有機化合物や、体内で合成できる有機化合物の種類は、動植物によって異なりますので、何が「ビタミン」であるかも動植物の種類によって異なります。人間の場合、ビタミンは13種類が認められています。
13種類のビタミンは脂溶性・水溶性の2種類に分類することができます。脂溶性ビタミンは油に溶けることで吸収されやすくなるので、炒め物などの油を使う料理にすると効率よく摂取することができます。逆に、水溶性ビタミンは洗うことで溶けだしてしまうので、調理の際には、水に長時間さらさないようにするなどの工夫が必要です。また、脂溶性ビタミンは尿として排出されないため、必要量以上を摂取し続けると体内に蓄積され、過剰症を引き起こすことがあります。
ビタミンA
ビタミンAは、目の細胞の中にある光を感じる物質(ロドプシン)の構成成分です。また、皮膚や粘膜などの最も外側の細胞層「上皮組織」の新陳代謝を高めたり、保護したりするはたらきがあります。
動物性のビタミンAであるレチナールはレバー類に多く含まれますが、例えば焼き鳥のレバー串などでは1串で1日の上限量を超えてしまうので、日常的には卵やバターなどから摂取するといいでしょう。よりお勧めなのは、緑黄色野菜から摂取する方法です。緑黄色野菜に含まれるβカロテンは体内で必要な分だけビタミンAに変化するので、摂りすぎる心配はありません。にんじん、ほうれん草、ニラ、かぼちゃなどに多く含まれています。
1日の推奨摂取量は、30~49歳の男女でそれぞれ900μgRAE、700μgRAEとなっています。
ビタミンB群、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸
13種類のビタミンのうち「ビタミンB」と名前が付くものは、B1、B2、B6、B12と4種類あり、まとめてビタミンB群とよばれます。また、13種類のビタミンのうち「ビタミン~」という名称になっていない4種類も実はビタミンB群に分類されており、それぞれ、ナイアシン=ビタミンB3、パントテン酸=ビタミンB5、ビオチン=ビタミンB7、葉酸=ビタミンB9、というようにビタミン名も持っています。
ビタミンB群のうち葉酸とビタミンB12以外は、三大栄養素からエネルギーを取り出す一連の反応に関わる働きをしています。エネルギーは、食事から得た炭水化物や体内に蓄積された脂肪を分解して作られるグルコースが、多くの段階を経て小さく小さく分解される過程で取り出されます。各段階で反応を促進しているのが酵素ですが、これらの酵素は「補酵素」という酵素本体とは別の物質と結びつくことで初めて酵素として働くことができます。ビタミンB群は、全てがこの「補酵素」として働く物質。つまり、三大栄養素をいくら摂取しても、ビタミンB群が不足しているとエネルギーを得ることができないという重要なビタミンなのです。
ビタミンB群は全て水溶性なので、必要量以上に摂取しても尿とともに排出されます。30~49歳の男女を例に取ると、それぞれ1日の推奨摂取量は下記のようになっています(数字は男性、女性の順)。
- ビタミンB1 1.4mg、1.1mg
- ビタミンB2 1.6mg、1.2mg
- ナイアシン 15mg、12mg
- パントテン酸 5mg、4mg
- ビタミンB6 1.4mg、1.2mg
- ビオチン 50μg
- 葉酸 240μg
- ビタミンB12 2.4μg
ビタミンC
私たちの皮膚は複数の層構造になっており、表面を覆う「表皮」の下には皮膚を「真皮」という構造があります。この真皮は「コラーゲン」「エラスチン」などのタンパク質でできており、肌に弾力性を与えています。これらのタンパク質や、その隙間を満たす水分を保持する「ヒアルロン酸」は、全て真皮の中にある「線維芽細胞」が作り出しています。この線維芽細胞を活性化しているのがビタミンCです。
ビタミンCが豊富なのは、ピーマン、ゴーヤ、ブロッコリー、カリフラワーなど。また、柿、キウイフルーツ、いちごなどの果物にも豊富に含まれています。水溶性のビタミンで熱にも弱いため、加熱せずに食べられる果物で効率よく摂取することができます。
1日の推奨摂取量は、30~49歳の男女で100mgとなっています。
ビタミンD
強い骨を作るために必要な栄養素と言えばカルシウムが有名ですが、腸内でこのカルシウムの吸収率を高めているのがビタミンDです。また、ビタミンDはカルシウムの骨への沈着を促進しており、子供の成長や骨粗しょう症予防など、カルシウムと並んで丈夫な骨を作るのに欠かせない栄養素です。
ビタミンDは、しらす干し、鮭、いわしの丸干しなどの魚や、きのこ類に多く含まれます。脂溶性のビタミンでなので、必要以上に摂取すると、嘔吐や食欲不振などの過剰症を引き起こすことがあります。
1日の推奨摂取量は、30~49歳で5.5μgとなっています。
ビタミンE
私たちの体を作っているのは37兆個の細胞ですが、その細胞の最も外側は細胞膜に覆われており、この細胞膜は脂質が主成分になっています。ビタミンDは脂溶性のビタミンで、かつ強い抗酸化作用があることで知られており、細胞膜に入り込んで細胞を守る働きをしています。
脂溶性のビタミンではありますが、他の脂溶性ビタミンと違って過剰症の心配はあまりないと言われています。ビタミンEはサフラワー油、とうもろこし油、なたね油などに多く含まれるので、摂取量に不安がある人は料理用油をこれらのものに変えてみてはいかがでしょうか。食品ではすじこやたらこなどの魚卵、ナッツ類に多く含まれています。
1日の推奨摂取量は、30~49歳の男女でそれぞれ6.5μg、6.0μgとなっています。
ビタミンK
ビタミンKは血液の凝固に関わる栄養素です。食品から摂取することができるほか、腸内細菌が作り出すものも利用しています。腸内細菌で作られているため、通常の食生活ではほぼ不足することはありませんが肝臓での代謝異常などの疾患がある場合は欠乏症を起こす場合があります。また、ビタミンKの不足がよく話題になるのが赤ちゃんです。母乳にはビタミンKはあまり含まれず、腸内細菌叢が未熟な乳児は腸内細菌からの供給も受けられないため、皮下や胃腸などから出血しやすくなります(乳児ビタミンK欠乏出血症)。
納豆、モロヘイヤ、しゅんぎく、納豆などに含まれています。脂溶性のビタミンですが、過剰症の心配はほとんどありません。
1日の推奨摂取量は、30~49歳で150μgとなっています。
ビタミンは種類が多いため意識してしまうと摂るのが大変です。肉ばかり、魚ばかり、野菜ばかりの食生活にならないようにしたいものですね。
次回はミネラルについて解説します。
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