バランスの良い食生活のために1日に必要な栄養素は?「ミネラル」編
「バランスの良い食生活」に必要な栄養として、これまで「三大栄養素」「ビタミン」を紹介してきました。今回は残る1つの要素である「ミネラル」について解説します。
「バランスの良い食生活」を実現するために必要な栄養素
バランスの良い食生活のために1日に必要な栄養素は?「三大栄養素」編
バランスの良い食生活のために1日に必要な栄養素は?「ビタミン」編
前回の「ビタミン」編では、細胞が正常に働くために必要で、体内では合成できない有機化合物の総称がビタミンであることをお伝えしました。今回ご紹介する「ミネラルは」同じく細胞が正常に働くために必要な物質のうち、無機物であるものの総称です。体にとってミネラルの役割は1つでないことが多く、研究が進んでいないため全ての役割について明らかになっていない場合がほとんどですが、必須ミネラルは16種類あると言われており、このうち厚生労働省が摂取量を定めているものは13種類あります。
細胞の機能を維持するナトリウム・マグネシウム
「塩分の摂りすぎ」などが問題になるナトリウムですが、私たちの体、特に細胞の機能を維持するために必要不可欠なミネラルです。
私たちの体には血液、リンパ液、脳脊髄液ほか、多様な液体が存在し、それぞれの役割をはたしています。これらの体液が正常に機能するためには体液のpHや浸透圧が一定である必要がありますが、体液に溶け込んでこれらを調整しているのがナトリウムとカリウムです。
ナトリウムは様々な食品(特に調味料)に含まれるため、通常は不足することはありませんが、大量に汗をかいた時などには一時的に不足する場合があるので夏場は注意が必要です。
骨や歯の形成に関わるカルシウム、リン、マグネシウム、マンガン
体の組織を大雑把に分けると、脳、臓器、筋肉、骨などに分類されますが、このうちの骨および歯を作る成分が、カルシウム、マグネシウム、リンの3つのミネラルです。
特にカルシウムは13種類のうち最も多量に存在するミネラルで、且つ、体内の全カルシウム量の99%は骨と歯に存在しています。
リンはカルシウムに次いで多く存在するミネラルで、多くはカルシウムやマグネシウムと結合して骨や歯に存在しています。また、エネルギーを保持する「ATP(アデノシン三リン酸)」の形になっていたり、リン酸塩の形で浸透圧調節に関わっていたりと、幅広い役割があります。
マグネシウムは体内に成人で約25g含まれ、その70%は骨や歯に存在しています。骨や歯の主成分ではありませんが、カルシウムが骨になる際に必要になるミネラルです。
マンガンは上記の3つと異なり、体内に含まれる量が少ない「微量ミネラル」ですが、新しい骨が作られ、古い骨が壊される骨の「代謝」に必要なミネラルです。骨の他にも、軟骨や関節の形成にも利用されます。
赤血球のヘモグロビンを作る鉄、銅、モリブデン
私たちが呼吸によって鼻や口から取り入れた酸素は、肺を経て赤血球が全身に運んでいます。赤血球が酸素を運べるのは、赤血球の中に酸素と結びつく「ヘモグロビン」という物質があるから。
このヘモグロビンの成分を構成する成分が鉄です。また、鉄がヘモグロビンに組み込まれる際にはそれに対応する酵素が必要になりますが、この酵素の補酵素として働いているのが銅です。
ヘモグロビンの成分である鉄、鉄をヘモグロビンにする銅の2つが不足すると、私たちは貧血を起こすことになります。
モリブデンは直接ヘモグロビンを作る機構には関与していませんが、鉄や銅の代謝を促進しており、血中の鉄が不足すると肝臓に貯蔵されている鉄の運搬を助け、造血を促しています。他に、プリン体が代謝されて尿酸になる機構で働く酵素の補酵素としての役割も重要です。
様々な酵素の働きに関わる亜鉛
酸素を全身に運んだり、エネルギーを作り出したり、私たちの体内では常に何らかの「化学反応」が起こっていますが、この化学反応を円滑に進めているのが酵素です。亜鉛はこの数ある酵素のうち、約200種類の酵素の「補酵素」として働いています。
成長に関わる甲状腺ホルモンの材料、ヨウ素
ヨウ素は、喉にある「甲状腺」という器官に多く存在し、この甲状腺が出す「トリヨードサイロニン」「サイロキシン」という甲状腺ホルモンの成分になっています。
これらのホルモンは、全身の細胞に作用し、呼吸量やエネルギーの産出量を増大させ、基礎代謝を向上させるホルモンとして知られています。
また、たんぱく質の合成を促進する成長ホルモンとしても知られています。
インスリンの働きを助けるクロム
血糖値を下げる唯一のホルモン「インスリン」をご存知の方は多いと思いますが、このインスリンの働きを助け、血糖値を下げる機構の一部として働いているのがクロムです。
血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が下がるのは、血液中のブドウ糖が細胞内に移動するからです(ブドウ糖はその後細胞内でエネルギー源として利用されます)。このブドウ糖の移動は、インスリンがブドウ糖に結合して細胞の中まで運んでいくことで実現しています。ブドウ糖と結びついたインスリンは、専用の入口から細胞に入っていくことになりますが、この入口をあけるカギとなっているのがクロムです。
クロムは他にも、脂質代謝やタンパク質代謝にも関わっています。
抗酸化機構の一部となるセレン
セレンの吸収の仕組みや働きについてはまだわかっていないことが多くありますが、ビタミンEやビタミンCの働きを助け、抗酸化作用を示すとされています。
セレンは様々な食品に含まれていますが、特に植物性食品の場合は土壌に含まれるセレン量に左右され、含有量に大きな幅が出てきます。日本では欠乏症の心配はないそうですが、土壌にセレンが乏しい地域では、セレン欠乏によるとみられる疾患が多く知られています。
ところで、私たちは毎日の食事から「水」を必ず摂取しています。水をそのまま飲む場合はミネラルウォーターを飲む方も多いかもしれませんが、料理に使う水は水道水という方が多いでしょう。日本では、この水道水や、土壌にミネラル分が乏しいため、水や土壌にミネラルが豊富なヨーロッパのような地域に比べて、ミネラルが不足しがちであることが指摘されています。
特に不足が問題となるのが、亜鉛、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄など。この5種類については、積極的に食事やサプリメントから取り入れるようにしたいですね。
健康な食事についてのおすすめの記事
コンビニで簡単に!健康にいい食品の選び方
見た目より頼りになる!もやしの栄養
私たちの体を作るアミノ酸の話
発酵大麦エキス情報ポータルサイト事務局では、月に1回当サイトの更新情報をメールマガジン形式でお送りしています。メールマガジンのご登録は以下のバナーをクリックしてください。