低プリン体の食事をするだけでいいの?「尿酸」はどこからくるのか?
12月は忘年会シーズン。早いところでは12月のはじめくらいからちらほらと忘年会の約束が入り始め、中旬を過ぎると週にいくつも「掛け持ちする」人も増えてきます。下旬にはクリスマスや年の瀬などで、12月を過ぎればお正月と、年末年始にかけてはお酒や美味しい料理をいただく機会がグンと増える時期、日ごろから尿酸値を気にかけている方にとって、悩ましい季節ではないでしょうか。
今回はそんな気になる尿酸値について解説します。
「尿酸」はどこからくるのか?
健康診断などで測定される尿酸値。正常値は7.0㎎/dlとされ、これを超えると「高尿酸血症」と呼ばれる状態になります。この尿酸値とは、血液1dl(デシリットル)中「尿酸」が何mg(ミリグラム)含まれているかを示す指標です。正常の範囲内であれば尿酸は血液に溶けた状態で存在できますが、7.0㎎/dlを超えると血液中に溶けきれずに結晶となりはじめ、関節に蓄積していきます。
尿酸は痛風の原因物質。関節に蓄積した尿酸の結晶が剥がれ落ちた際に生じる痛みは「痛風の発作」として広く知られています。
血液中の尿酸は、初めから尿酸として食品などから摂取されているわけではなく、一般に「プリン体」と称される物質が元になって体内で合成されているものです。プリン体は食品からも摂取されていますが、もともと細胞の「核」を構成する物質の1つであるため、尿酸値の高い低いにかかわらず、誰でも体内に一定量持っています。
プリン体カットのビールなどが話題になるように、高尿酸血症の治療といえば、プリン体を多く含む食品は一切口にできないような、厳しい食事制限が必須であるイメージがあります。ですが、最近の研究では、体内にあるプリン体のうち、食品が由来となっているものは約2割程度であることがわかってきました。現在では以前ほどプリン体を含む食品を厳しく制限するよう指導されることは少なくなっています。
全体の8割を占める、体内由来のプリン体が生産されるルートは2つあります。
1つは、細胞の代謝によるもの。前述の通り、細胞の核はプリン体を原料の1つとしています。細胞はある程度古くなると分解されますが、その際、核もプリン体に分解されています。
もう1つのルートは、エネルギー代謝によるもの。私たちの活動のためのエネルギーは、主に体内にあるATP(アデノシン三リン酸)という物質を分解することで生産されます。
ATPはプリン体の一種であるアデニンに単糖の一種であるリボース、3つのリン酸が結合した物質。エネルギーが必要になった際、ATPからリン酸が1つ外れることでエネルギーが取り出され、ATPはADP(アデノシン二リン酸)になります。通常ADPはリサイクルされてATPに戻るのですが、激しい運動を続けた場合、ATPの再生産が間に合わず、ADPはプリン体である「アデニン」に、さらに尿酸にまで分解が進みます。
尿酸が増え続けない理由
細胞の代謝もエネルギー代謝も、当然抑制することはできませんから、プリン体の生産を止めることはできませんし、プリン体の分解物である尿酸も毎日作られ続けます。
にも拘わらず、血液中に尿酸が溢れてしまわないのは、尿酸が尿に溶けて少しずつ排出されているから。尿酸は水に溶けにくい物質なので、一度に大量に排出されることはありませんが、通常は尿酸の生産と排出はバランスが取れているため、尿酸が過剰になることはありません。
尿酸の生産が多すぎる、または排出が少なすぎるなど、バランスが崩れてしまうと、血液中の尿酸が増加し、高尿酸血症となります。特に日本人の高尿酸血症患者には特徴があり、その6割は尿酸の排出機能に問題がある、「尿酸排泄低下型」であることがわかっています。このタイプは、尿酸の生産は正常であるものの、排出量が少ないために尿酸値が上昇してしまうタイプです。ほかに、尿酸の生産が過剰な「尿酸産生過剰型」は1割、この2つの型の混合型が3割となっています。
痛風の発症は遺伝によるところも大きく、同じ高尿酸血症でも、正常値を少し超えただけで痛風を発症する人と、正常値を大きく外れてもなかなか発症しない人がいるのも事実です。ですが、正常値を超えていれば痛風のリスクは当然高くなりますので、コントロールしていくことが大切です。
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