肥満による健康への悪影響



さまざまな肥満

生活習慣病の増加と共とともに、その最大危険因子である肥満が問題視されるようになりました。肥満とは、単に体重が多いことだけでなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態のことをいいます。

肥満の判断基準にはBMI(=体重(kg)/身長(m)の2乗)が頻繁に用いられており、日本肥満学会の定義により、BMIが25以上であれば「肥満」とされます。BMIが25以上であり、かつ肥満による健康障害がある場合には「肥満症」と呼ばれ、減量治療の対象となります。

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ただし、BMIが25未満の人でも、体脂肪率や内臓脂肪の断面積が基準より多く、実は肥満だったという場合もあります。このような肥満を「かくれ肥満」と呼んでいます。

 

内臓脂肪は生活習慣病の原因に

皮膚の下にあり、摘まむことができる脂肪が皮下脂肪。一方、内臓の周りにあるのが内臓脂肪です。皮下脂肪が長期的にエネルギーをため込む脂肪であるのに対し、内臓脂肪はエネルギーを一時的に蓄えて、必要なときにすぐ取り出して使える脂肪です。

内臓脂肪は燃えやすい性質を持っていますが、燃焼する際に遊離脂肪酸という物質が大量に生じます。遊離脂肪酸は空腹時の大切なエネルギー源ですが、多すぎると体に悪影響を及ぼします。

体脂肪を蓄積している脂肪細胞は様々な物質を分泌することがわかっていますが、その中には、大量に分泌されることで健康に悪影響を及ぼすものも含まれています。

例えば、血液凝固作用を持つPAI1や、止血・抗炎症作用を持つTNFαなどです。これらは体にとって必要な機能を担う分泌物ですが、内臓脂肪の蓄積により多量に分泌されると、PAI1は血栓をできやすくする、TNFαはインスリンの働きを阻害して血糖値を上昇させる、などの悪影響を及ぼします。

つまり、内臓脂肪は必要以上に蓄積することで、「悪玉の脂肪」となり、多くの病気に密接に関係しているといえます。

 

内臓脂肪型が多い「かくれ肥満」の人は、脂肪肝の発症率も高い

東海大付属病院の健康診断初心者(約35,000人)を対象とした調査によると、1989年から2000年の10年間で脂肪肝と診断される人の数は倍増し、全体の約30%を占めました。

脂肪肝は肥満や飲酒習慣、糖尿病などによって起こるとされていますが、近年、こうした要因が見当たらない患者も増えています。BMIが25未満の非肥満者でも、5人に1人が脂肪肝という現状があります。体重の軽重のみを気にするのではなく、脂肪の種類にも注目する必要があります。

 


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