麹菌が造りだす機能性成分



日本人の食生活を語る上で、麹の存在は欠かすことができません。醤油、味噌、日本酒、酢、焼酎・・・そして、近年ブームになっている甘酒など、様々な日本食が『麹の力』を使って造られています。甘酒は、冬に飲むイメージが強いのですが、意外にも『夏の季語』であることをご存知の方は少ないのではないでしょうか。夏バテに効くドリンクとして、ブドウ糖やビタミンを含む甘酒を江戸時代には飲んでいたということのようです。

麹が健康に良いというイメージは皆さんも持たれていると思いますが、具体的にはどのような機能性成分を麹菌は作るのでしょうか?機能別にみていきましょう。

麹

 

腸内環境を改善する成分

麹には多くの酵素が含まれています。この酵素の働きによって生み出されるのがオリゴ糖です。オリゴ糖は善玉菌の餌となり、腸内環境を整える働きがあるとしてよく知られている成分です。さらに、近年では麹が産生する酸性プロテアーゼを摂取することで腸内ビフィズス菌が増えるという研究を広島大学のグループが発表しています。このグループによれば、大腸内難消化性タンパク質を麹菌の作る酸性プロテアーゼが分解し、その分解産物によってビフィズス菌の増殖が増えるのではないかと考察されています。

出典:Yang Y et al. Beneficial effects of protease preparations derived from Aspergillus on the colonic luminal environment in rats consuming a high-fat diet. Biomed Rep. 2015 Sep; 3(5): 715–720.

腸内環境

 

肌に対する成分

「杜氏の手は白い」という話は有名な話です。その関与成分として、コウジ酸が知られており、大手化粧品メーカーからもコウジ酸を配合した化粧品が配合されています。

紫外線などの刺激によってメラニンが生成され、肌が黒くなります。メラニンは、チロシナーゼによって生成されますが、コウジ酸はこのチロシナーゼを阻害することで、メラニンの生成を阻害し、美白効果を発揮します。

さらに近年では、麹に含まれるセラミドが肌のバリア機能を高めるという研究もあります。

 

今後期待される成分

麹菌(学名:Aspergillus oryae)はデフェリフェリクリシンを産生することが知られています。デフェリフェリクリシンは環状のペプチドで、鉄をキレート(金属イオンと強く結合すること)します。鉄をキレートしたデフェリフェリクリシンをフェリクリシンといい、清酒の着色物質としても知られています。フェリクリシンは清酒の業界では着色物質として好まれないですが、一方で、鉄をキレートしていることから貧血予防に効果がある機能性成分として活用することが期待されています。また、デフェリフェリクリシンは抗炎症抗酸化効果があることもわかっています。

 

古くから私たちの生活に息づいてきた麹菌。食事を美味しくするだけではなく、機能性の面でも一役買っていたのですね。麹の機能については、まだまだ分かっていないことも多いようで、更なる可能性を感じます。今後の研究の進展に期待しましょう。

 

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「菌食論」 菌を食す
麹とは
日本における麹の文化

 

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