食品が傷むのは何のせい?「黴る」と「腐る」
2017年も半分が過ぎ、先ごろ関東までが「梅雨入り」したことが発表されました。だらだらと降ったり止んだりが続く雨に加え、気温も決して低くなく、湿っぽく、憂鬱な天気が続きます。
体にとって不快なだけでなく、食品も傷みやすくなり、常温に置いていたパンやおかずをダメにした経験がある人も多くいることでしょう。
さて、食品が傷む場合、「カビが生える(黴る)」と「腐る」の大きく2パターンがあります。どちらも、空気中や食品中にある微生物が食品に付き、その食品を餌にして増える過程で、人間に有害な毒素を出したり、食品を人間が食べるには不都合なほどに変質させたりする点で共通しています。
カビが生えた食品と腐った食品は見た目に異なるので、見ればだいたいわかりますが、この2つの違いは、原因となる微生物にあります。
カビの原因となる微生物
カビの原因は、「菌類」と呼ばれる微生物。カビのほかに、キノコや酵母も菌類の仲間です。菌類は、目に見えないほどに小さい単位で生きている生き物ですが、例えばキノコは多数の細胞がまとまって生活している多細胞の菌類であり、酵母は単体の細胞が独立して生活している単細胞の菌類です。
カビは細胞が糸のように繋がった多細胞の菌類で、糸状の構造は何股にも分かれて成長するため、人間には「面」として広がるように見えます。ある程度の面積になるまで平面的に成長し、その後、上に伸びる枝のようなものを作り、先端で胞子を作って飛ばします。私たちが見ているカビの「フワフワ」はこの部分。また、カビと言えば黒色、緑色、赤色など色がカラフルなのも特徴ですが、これは胞子の色です。
カビは有害な「カビ毒」を発生させるものが多くあります。多くのカビ毒は中長期的な摂取によって害をもたらす性質のものが多く、急性の症状である食中毒という形で害をもたらすことは稀です。なので「パンを食べた後、袋に残ったパンにカビが生えていたのを見つけた」程度で心配する必要はありません。但し、長期にわたって継続的にカビが生えた食品を摂ると、がんやアレルギーの原因となることがありますので、一部の食用になっているものを除いては食べるべきではありません。
カビが生えた部分を除いて食べてしまう人もいますが、胞子や胞子を出す枝の部分以外は見えにくく、除ききれない可能性が高いので、食べないようにするのが無難です。また、カビ自体は加熱による殺菌が可能ですが、カビ毒は加熱しても無毒化できないものがあります。
腐敗の原因となる微生物
一方で、腐敗の原因となるのは、「細菌」と呼ばれる微生物。個々の細胞の大きさは菌類よりもずっと小さい生き物で、菌類の中でも小さい部類の酵母(10μm程度)よりも、小さいものが殆どです。みな単独で生活していて、一般的な細胞が持っている「核」も持たない原始的な生き物です。
食品に変質をもたらしているものが細菌であっても、人に有用なものは「発酵」と呼ばれます。一般的な食品であるヨーグルトや納豆は、それぞれ乳酸菌や枯草菌といった「細菌」による変質であり、腐敗と同様の仕組みで作られています。
カビ同様、細菌も代謝物として毒素を出します。急性の食中毒の原因となりにくい「カビ」に比べ、腐敗した食品(に含まれる毒素)は下痢や嘔吐などの激しい症状の食中毒の原因となります。細菌自体は加熱によって死滅しますが、無害化できない毒素が多くあるので、腐敗したものは加熱しても食べるべきではありません。特に免疫力の弱い子供や老人などは、症状が激しくなりますので、古くなって傷んだ食品は速やかに廃棄するようにしましょう。
ウイルスによる食中毒
食中毒を起こす原因となるものとして、菌類(カビ)、細菌類のほかに「ウイルス」があります。冬場に流行するノロウイルスが非常に有名ですが、他に食中毒を起こすウイルスとして知られているのが、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスです。
ウイルスの厄介なところは、ウイルスを含んでいても食品が変質しないことです。食品にウイルスが含まれていても、食品にカビが生えることはありませんし、色が変わったり、匂いや味がおかしくなったり、食感が変化したりすることなく、食品はいたって普通に見えます。
ウイルスは、食品が生きている時からその体内に潜んでいるので、締めた直後の非常に新鮮な状態であっても食中毒を起こします。牛レバーの生食が禁止された後、豚レバーの刺身を提供する飲食店が出てきて問題になったのは記憶に新しいところですね(ブタはE型肝炎ウイルス感染源として知られています)。
ウイルス自体は毒素を出さないので、ウイルス自体を変質させてしまえば感染することはありません。ウイルスを変質させるためには加熱調理が非常に有効で、例えばA型肝炎ウイルスの場合、中心部を85~90℃で、90秒間加熱することで無害化することができます。
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