「年をとると筋肉痛が遅れる」は間違いだった?



気候が良くなってくると、夏の暑さで「お休み」していた人も運動をしたくなってくるでしょう。秋は「スポーツの秋」でもありますね。お休みが少し長くなってしまった人が、運動を再開したときに起こすのが筋肉痛です。学生の頃に比べると、大した運動量でもないのに筋肉痛になったり、なぜか運動の2日後に体が痛くなったり…運動は楽しいですが、運動後の継続する痛みはなかなか厄介ですね。

 

実は解明されていない筋肉痛の仕組み

筋肉痛は、普段はしないような強い運動や時間の長い運動をしたとき、運動が終了して数時間から数日後に発生しますが、痛みが発生する仕組みについては、いくつかの説があります。

まず、以前に主流だったのが乳酸が原因となる節です。運動をすると、筋肉内に疲労物質の乳酸が溜まります。この乳酸が、筋肉への酸素供給を阻害するため、筋肉は疲労状態からの回復が遅れ、痛みが発生するというもの。皆さんの中には、小中学生のころ、この説を聞いてそう信じてきたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

運動後に乳酸がたまるのは本当ですが、血中の乳酸濃度は運動後速やかに低下することがわかっています。これは痛みが運動後数時間後から現れ、継続する原因としては矛盾するため、乳酸が筋肉痛の原因となっているというこの説は、現在では否定されています。

19358083_s

この説に代わって、現在広く一般的に言われているのは、運動によって傷ついた筋肉が修復する過程で痛みが生じるという説です。

普段しないような運動をすると、普段使われていなかった筋肉(を構成する筋繊維)は急な負担に耐えられず傷ついてしまいます。この筋肉の傷を修復しようとして白血球が集まると炎症が起き、痛みの神経を刺激する物質(ブラジキニンやヒスタミンなど)が発生します。

筋肉の中には痛みを感じる神経がないので、傷ついた直後(運動中~運動直後)には痛みを感じることはありませんが、痛みを感じる神経が通る筋膜まで刺激物質が到達することで、筋肉に痛みを生じるようになるというものです。

 

年をとっても筋肉痛が来るまでの時間は変わらない

筋肉痛は通常であれば数時間後か、その翌日には来るものですが、年齢を重ねるにつれて2日後、3日後に来るようになったという人は多いものです。なので、自分も年を取ったなぁなどと笑い話になることもありますが、これは間違いであることがわかっています。同じ負荷の運動であれば、年齢がいくつであろうとも、筋肉痛が来るまでの時間は変わらないことが、実験で確かめられています。

それでも実感として「遅く来ている」ように感じるのには、やはりいくつかの説があります。

gym

まず、数時間~翌日に筋肉痛が来るような激しい運動を、そもそもしていないという説。普段から運動をしていないと、運動機能は年齢とともに衰えてきます。運動習慣がないまま年を重ねた人は、運動機能が衰えているため、高負荷の運動はやろうと思ってもできず、低負荷の運動ばかりになります。損傷の程度が小さく、すぐに修復が始まる重大な損傷までに至らないため、修復が始まるまでに時間がかかり、筋肉痛が遅れて来ているように感じるというものです。

次に、加齢による血行の悪化が関係しているという説。筋肉の損傷を修復するためには白血球が集まらなければなりませんが、白血球は当然血液に乗って筋肉に到達します。血行が悪いと、白血球が到達するまでに時間がかかるので、修復が開始するまでに時間がかかります。また、修復過程で発生する刺激物質が筋膜に到達するまでの時間が長くなることも「遅く来る」原因となるというものです。また、血行が悪いと修復自体も長期化するため、筋肉痛が出ている期間自体も長くなると考えられています。

他には、運動の内容によって筋肉痛の現れ方が異なる、という説もあります。激しい筋トレや短距離走のような、負荷の大きい運動を行うと、筋肉痛は早く来て、ジョギングやウォーキングなどの負荷の小さい運動を行うと、筋肉痛は遅く来るというものです。

いずれにしても、筋肉痛が起こると普段の動きもままならなくなるので、事前に筋肉痛を予防するか、もしくは筋肉痛になってしまったら早く治したいところですね。

 

筋肉痛の回復

筋肉痛は普段しないような運動をすることで発生する、というのがポイントで、普段から運動習慣がある人は、筋肉痛になりにくくなっています。なので、筋肉痛にならないようにするためには、普段から運動しておくことが最も重要です。ですが、その運動習慣を今から作る、という人も多いでしょうから、起こった筋肉痛を早く治す方法も知っておきたいですね。

まず、運動の直後。筋肉に炎症が生じていると、刺激物質が多く出て痛みが激しくなりますので、炎症を鎮める必要があります。運動の直後に筋肉が熱を持っていれば、それは炎症を起こしている状態ですので、炎症を鎮めるためによく冷やしましょう。筋肉が熱を持っているのは運動の直後~長くても数時間程度ですので、その間だけで大丈夫です。

次に、運動後、熱が引いた後では、血行を良くすることを心がけましょう。血液は、筋肉の修復の材料を運びこみ、また、修復後のゴミを運び出す、体内のインフラです。この流れが悪ければ材料は届きませんし、ゴミもいつまでも損傷個所に残ったままになり、修復は遅れ・長期化していきます。
血行を良くするためには、運動直後とは逆で、温めることが大切です。温めすぎは良くないので、10~20分程度で覚める、蒸しタオルやレンジで温めるタイプのカイロなどを利用するといいでしょう。また、マッサージも効果があります。力を込めて揉むようにマッサージをするのではなく、血流をアシストする撫でるようなマッサージが適しています。

他には、損傷部分回復の材料となるタンパク質や、代謝を高めて疲労回復を促すビタミンB1を積極的に摂るのもおすすめです。

 

せっかく運動をはじめても、筋肉痛が辛くて続かない…というパターンは避けたいものです。まずは低負荷運動から始め、運動後はしっかりサポートしながら、運動習慣を続けていきたいですね。

 

こちらの記事もおすすめ
忙しい人のための運動習慣!仕事のある平日に運動不足を解消する工夫とは?
健康長寿の鍵「テロメア」
たんぱく質をつくる…だけじゃない!「アミノ酸」のちから

 

発酵大麦エキス情報ポータルサイト事務局では、月に1回当サイトの更新情報をメールマガジン形式でお送りしています。メールマガジンのご登録は以下のバナーをクリックしてください。

メールマガジン登録


関連記事