体内時計が乱れが起こす健康への悪影響
先日、2017年のノーベル賞の発表がありました。ノーベル賞は、ダイナマイトなど火薬・兵器の発明によって巨万の富を築いた、アルフレッド・ノーベルの遺言に従い、その資産を基金として始まった世界的に権威のある賞です。日本でも数多くの受賞者を出しており、2014年から2016年まで、自然科学部門での受賞が続いたこともあり、今年も注目されていましたが、残念ながら、2017年は日本人の受賞はなりませんでした。
ですが、もちろん2017年も、各分野で様々な功績のある研究者が賞を受賞しており、生理学・医学賞は、体内時計の仕組み解明に功績のあった3名の研究者が受賞しています。
体内時計とは何か
体内時計とは、生き物に本来備わっている能力で、光や音などの外部からの刺激を受けなくても、一定の周期で生理的な反応を繰り返す仕組みのことです。最も良く知られているのは、朝になると目覚め、夜になると眠るというものですが、他にも体温や血圧の上昇・下降や、各種ホルモン分泌の増減など、自分自身では自覚しにくい反応も、体内時計によって引き起こされています。
体内に存在するタンパク質はすべて、それに対応する遺伝子によって作られていますが、その中に、体内時計に関わるタンパク質を作る遺伝子もあります。その遺伝子は、常に体内時計タンパク質を作り続けているわけではなく、別のタンパク質の影響も受けながら、一定の周期で、体内時計のタンパク質を作ったり、作るのを停止したりしています。このタンパク質の生産・生産停止のサイクルは、外部から刺激を受けなくても繰り返されるので、例えば光量が常に変わらない場所であっても、ある程度は、毎日決まった時間に寝たり起きたりすることができます。
体内時計を整えるためには朝の光を浴びることが大切、とよく言われますが、これは、このタンパク質の生産・生産停止のサイクルが、強い光によってリセットされるためです。光を浴びることで、タンパク質の生産は毎日「朝」の状態からリスタートを繰り返します。
体内時計の乱れによる悪影響
体内時計が乱れると、自律神経が乱れ、睡眠障害、肥満、高血圧などの様々な健康への悪影響をもたらすことがわかっています。現代社会は体内時計を乱すような環境にあふれていますが、特に昼夜が頻繁に入れ替わるシフトワークの組み方について、気になる実験結果も報告されています。
この実験では、12時間ごとに明るさを変えて人工的に昼と夜を作り出し、昼夜が頻繁に入れ替わる「きついシフト」では4日おきに昼の時間を8時間前倒し、これとは逆の「ゆるいシフト」では7日おきに8時間後ろ倒しにして、それぞれの環境下でのマウスの生活のリズムなどを調査しています。きついシフトでは、4日おきに「夜」が4時間しかない日が出現する代わりに、「昼」は12時間で常に一定。ゆるいシフトでは、「夜」は常に12時間で一定ですが、7日おきに「昼」が20時間続く日がある、という条件となっています。
この結果、「きついシフト」では34匹中9匹が死亡したのに対し、「ゆるいシフト」で死亡したマウスは14匹中1匹と、死亡率に大きな差が見られたとのことです。また、「ゆるいシフト」でも体内時計の乱れは見られたものの、影響は軽微であったそう。
これまでの研究により、残念ながら、長期にわたって「昼間勤務のように健康的に夜勤をこなす」方法は見つかっていませんが、一方で、夜間営業を前提としている産業があることや、医療や介護の面でも、夜勤を一切やめてしまう、というのも現実的ではありません。
この研究をはじめとして、今後も負担の小さいシフトワークの研究が進み、また、産業界においても、従業員の健康に配慮したシフトワークの在り方について、議論していく必要がありそうです。
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