乳酸菌がつくるEPS(菌体外多糖)のはたらき
乳酸菌とは、ブドウ糖などの炭水化物を分解し、その名の通り乳酸を生産する菌の総称です。ヨーグルト、チーズ、しょうゆ、日本酒などの発酵食品に含まれますが、健康食品やサプリメント、最近ではチョコレートやソーセージ、お惣菜などにも配合されていますね。
乳酸菌のパワーの秘密:EPS
乳酸菌はヒトの体に良い効果をもたらしてくれますが、さらにその乳酸菌が菌体の外に出す菌体外多糖EPS(exopolysaccharide)もまた、私たちの体に良い効果を与えていると言われています。
EPSとは、乳酸菌が外部ストレスから自身を守るためにつくるもので、ヨーグルトの粘り気などの食感にも寄与しています。ヒトの体に対する有効な生理作用は、EPSを作り出す乳酸菌の菌種によっても様々ですが、今回は3つの例をご紹介します。
①ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性化
乳酸菌の1種であるラクトバチルス・ブルガリクス・OLL1073R-1株(L.bulgaricus OLL1073R-1)が産生する酸性EPSはナチュラルキラー細胞(NK)細胞を活性化するといわれています(参考1)。NK細胞は免疫系において大切な細胞であり、常に全身をパトロールし、がん細胞やウイルスに感染した細胞など、異常細胞のみを特異的に攻撃し、体を守っています。つまり、NK細胞を活性化することが免疫機能を高めることになります。
参考1:ヨーグルト乳酸菌が産生する菌体外多糖の利用と培養条件の検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslab/24/1/24_10/_pdf
②インフルエンザの予防
OLL1073R-1乳酸菌の生産するEPSは、マウスの抗インフルエンザ活性の強化や、ヒトのインフルエンザ罹患リスクの低減効果があるともいわれています。乳酸菌R-1ヨーグルトがインフルエンザの予防につながるとして、店頭で品薄になったというニュースは記憶に新しいですね。
③プレバイオティクス効果
やはり乳酸菌の1種であるクレモリス菌FC株(Lactococcas lactis subsp. cremoris FC株)が産生するEPSは、難消化性の構造をしていることが報告されています(参考2)。
そのため、食物繊維や難消化性デキストリンのように腸内細菌のエサとなるプレバイオティクスとしての働きを持ち、食後の血糖上昇を抑制する作用や、快便効果が期待されます。
また、動物試験やヒト試験においては、中性脂肪を減少させる効果や腸内環境の改善効果、排便後の爽快感の改善効果など様々な効果が報告されています(参考3)。
参考2:高コレステロール食負荷モデルに対するLactococcus lactis subsp. cremoris FC株(クレモリスFC株)の効果http://www.caspikai.net/caspikai/research/pdf/0020.pdf
参考3:Lactococcus lactis subsp. cremoris FCを含有する発酵乳の健常高齢者に対する排便および糞便内菌叢に及ぼす影響https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/52/6/52_6_243/_pdf/-char/ja
EPSの機能は乳酸菌の種類だけでなく、菌株ごとにも特性が異なるといわれていて、乳酸菌学会では新規かつ様々な健康効果の報告が行われています。
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