不眠が気になる場合に糖質制限ダイエットが向かない理由



食事制限を中心とするダイエットの中で、糖質制限は体重減少の効果が出やすいとして多くの人が取り組んでいます。完全に糖質をカットするのでなくても、糖質量を抑えた”ロカボ”食品・飲料も増えていて取り組みやすい環境も広がっています。

ですが、糖質制限は不眠を加速させる可能性をはらんでいます。ダイエット中、お腹がすいて眠れないということはよくありますが、糖質制限による不眠はそう単純なものではありません。糖質には、睡眠に関わるホルモンの分泌に関わる役割があるからです。

 

睡眠ホルモン分泌のしくみ

良い眠りを得るためには、1つには、睡眠ホルモン「メラトニン」が夜間に分泌される必要があります。メラトニンは、別のホルモンである「セロトニン」を原料として、脳内で作られますが、そのセロトニンは、トリプトファンというアミノ酸を原料として、昼間の強い光刺激を受けることで脳内で作られています。つまり脳内では、トリプトファン→セロトニン→メラトニンという順番で、昼間から睡眠の準備が進められているということになります。

セロトニンの原料となっているトリプトファンは、必須アミノ酸といって、おもに食品中のタンパク質が分解されることで腸から体内に吸収されます。一部は血液に乗って脳まで運ばれますが、脳内に入るには、脳の血管の壁にある「血液脳関門」という物質交換専用の通路を通る必要があります。

食品のGABAは脳には届かない?血液脳関門の働き

 

睡眠ホルモン生成に糖質が必要な理由

血液脳関門は特定の物質だけを通す通路で、トリプトファンは、専用の受け渡し物質(トランスポーター)に運ばれることで通ることができます。ですが、トランスポーターは、別のアミノ酸(BCAA)の運搬も担っており、別のアミノ酸がたくさんある場合には、あいているトランスポーターがなく、トリプトファンが運ばれないということも起こります。トリプトファンが脳内になくなれば、脳内でセロトニンが十分に作られず、結果、メラトニンの分泌も減り、睡眠の質の低下にもつながります。

糖質が意味を持つのはこのような別のアミノ酸がたくさんある場合です。食事から糖質を摂ると、糖を細胞に取り込むためにインスリンが分泌されますが、インスリンはBCAAなどのアミノ酸を筋肉に取り込む役割も持っています。BCAAが筋肉に取り込まれれば、トランスポーターに空きが出て、トリプトファンは十分量が脳内に運ばれるようになります。

実際に、インスリンの分泌が睡眠の質にかかわることを示唆した研究もおこなわれています。

金沢医科大学の米山知子氏らのグループでは、日本人男女1848人を対象に、GI値の異なる3種類の主食(米、パン、麺類)を摂取し、これが睡眠の質にどのような影響を与えるかを調査しました。GI値とは、食後血糖値の上昇しやすさを示す指標で、糖質制限ダイエットではこれが高い食品は制限すべきとされています。

調査の結果、高GI食の米の場合は睡眠の質の向上、低GI食の麺類の場合は睡眠の質の低下が見られ、主食の種類と睡眠の質に関連性があることが示されました。た(なお、パンでは睡眠の質への影響が見られませんでした)。

お米を食べるほど良質な睡眠に?(外部サイト:CareNet)

 

糖質制限ダイエットが注目を浴びて以降、糖質・炭水化物は敵のように言われてしまうことも多いですが、不眠の人にとっては諸刃の剣とも言えそうです。糖質制限ダイエット自体は、減量だけでなく、糖尿病などの他の疾患への効果が期待されている通り、適切に行えば有効なダイエットです。挑戦してみたい人は、医師やトレーナーなどの指導のもと、眠りへの影響が小さい形で実践したいものですね。

 

 

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