睡眠は削ることができるのか?レム睡眠に関する最新の研究
日本人は勤勉なイメージがありますが、近世以前、例えば江戸時代ではそんなこともなかったようで、例えば江戸城に勤務している武士では、役職によっては出勤日は3日に1回だったとか、午前10時に出勤して午後2時には退勤(しかも中1時間は昼休み!)だったとか、のんびりとした仕事ぶりが記録に残っています。
商家では休みは盆暮れ正月だけと言われることもありますが、盆暮れの休みは20日間前後もあったようですし、各月には固定の定休日が数日間あり、これとは別に、同じ業種間で決められたお休みも取られていたそう。『ぼてふり』のような商売でも1月のうち1/3程度を働けば暮らしていけたとか、仕事中にお酒を飲んでいる人も多かったとか、私たちが思う勤勉とは程遠い暮らしが伝えられています。
このようなユルい社会は魅力的ですが、おそらく現在では考えられない不便や不都合があったことでしょう。便利な社会に暮らす以上、多少の忙しさは甘受せねばならない…とは言え、今現在忙しすぎる!余暇の時間を作るには睡眠時間を削るしかない、そんな風に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
レム睡眠がないネズミの作製に成功
少しの時間で十分に眠ることができれば…と思っている方には非常に気になる研究が、先ごろ発表されました。理化学研究所の上田泰己教授を中心としたグループによるもので、研究では、レム睡眠に必須の2つの遺伝子を発見したほか、レム睡眠がほぼなくなるのネズミの作製に成功しました。
脳内にある神経伝達物質『アセチルコリン』はかねてよりレム睡眠に関わりの深い物質として知られていましたが、具体的にアセチルコリンがどのようにレム睡眠に関与しているのかは明らかになっていませんでした。今回の研究では、何種類かあるアセチルコリンの受容体のうち、2種類(Chrm1、Chrm3)がレム睡眠の出現に関わっていることが明らかになり、また、この受容体を発現させる遺伝子が特定されています。
2つの遺伝子のうち、Chrm1遺伝子がないマウスではレム睡眠・ノンレム睡眠の両方が、Chrm3遺伝子がないマウスはノンレム睡眠だけが減少しました。そして、その両方がないマウスでは、通常72分あるレム睡眠が、ほぼ0となったということです。
理研プレスリリース:レム睡眠に必要な遺伝子を発見―睡眠はどこまで削れるか―
掲載論文:Muscarinic Acetylcholine Receptors Chrm1 and Chrm3 Are Essential for REM Sleep
健康的に睡眠時間を削り、活動時間を伸ばすことができるのならば、1日30時間ほしい!という方には朗報とも言えるでしょうが、レム睡眠の役割がはっきりしていないことが気になります。レム睡眠には、覚醒時に獲得した記憶のうち不要なものを削除して有用なものだけにまとめたり、そうすることで脳内のメモリが溢れないようにしたり、という役割があるとも言われており、もしレム睡眠がなくなったときにこれらの働きが消えてしまうとしたら、私たちの記憶には問題が起こるようにも思えます。
また、別の研究ですが、睡眠そのものを阻害した実験では、マウスは身体的に様々な不調をきたしたのち最終的には死亡する結果ともなっています。
現段階では睡眠時間を削ってしまうことはあまり現実的ではありませんね。自分に必要な睡眠時間を正確に測ることは難しいのですが、7~8時間が一般的。仕事や余暇など、活動の欲は少し控えめに、なるべく睡眠を確保して健康を維持したほうが、結果的には活動的に過ごせるでしょう。
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