焼酎粕の農業利用
~焼酎粕は濃縮加工して活用されます~



焼酎粕とは、もろみを蒸留した後に残る醸造副産物です。
焼酎粕には大麦由来のタンパク質や窒素、リンなどの栄養成分、さらにはオリゴ糖や有機酸、ポリフェノール等が含まれています。
三和酒類(株)ではこれら豊富な有効成分に着目し、焼酎粕を濃縮加工して肥料・飼料の原料として活用しています。

焼酎粕を濃縮する理由  

こちらが焼酎粕。酒粕と違って液状になっています。

焼酎粕は蒸留残渣であるため、90%以上が水分で構成されます。
実はこの水分含有量の高さと豊富な栄養成分が仇となり、焼酎粕は腐敗しやすいという問題を抱えています。
そんな問題を解決する方法のひとつが、『焼酎粕の濃縮』です。
焼酎粕を固液分離し、分離液をさらに加熱濃縮することで水分含量を減らすことができます。水分が減ると、ものは腐りにくくなります。
干物や昆布などの食品は乾燥により保存性を高めますが、それと同じです。
焼酎粕濃縮液は原液と比べて水分が少なくなり、保存性およびハンドリングが良好となります。

熱エネルギーは焼酎粕から産生

三和酒類(株)拝田グリーンバイオ事業所では、メタン発酵システムを導入しています。
メタン発酵とは、微生物の働きにより有機性廃棄物からバイオガスを生み出す技術です。
メタン発酵設備によって焼酎粕をバイオガスに変換し、その熱エネルギーを濃縮液の加工に利用しています。
化石燃料の消費を削減できる、循環型エネルギーシステムと言えます。

三和酒類(株)拝田グリーンバイオ事業所 のメタン発酵システム

焼酎粕濃縮液の有効性

加工された焼酎粕濃縮液は、有機肥料の原料として活用されています。有機肥料は土に養分を補うだけでなく、土壌改良効果をもたらします。土の中の微生物を増やし、肥沃な土を作ることができるのは、有機肥料のメリットです。
しかし一方で有機肥料にはデメリットもあります。化学肥料と比べて速効性が低く、効果がでるまでに時間がかかってしまいます。

焼酎粕濃縮液は窒素成分として有機態窒素を多く含みますが、他の有機資材と比べて無機化率が高いという特徴があります。このため、焼酎粕濃縮液は有機資材でありながら速効性が比較的高く、化学肥料に近い感覚で使用できるとの評価を頂いています。
このほか、焼酎粕濃縮液は「根量の増加」、「根圏環境の改善」についても効果を発揮するとの報告があります。

三和酒類(株)では大学との共同研究により、焼酎粕濃縮液が土壌微生物叢を活性化するというデータを取得しています。

おわりに

今回は『焼酎粕を濃縮する理由』について簡単にご紹介しました。
焼酎粕濃縮液は肥料原料として優れた特徴を有しており、環境保全型農業に貢献可能な農業資材であると期待されます。
三和酒類(株)では今後も引き続き、焼酎粕に関わる科学的エビデンスの取得に積極的に取り組んで参ります。

ライター紹介

ゴトウタカヒロ

博士(農学)

「発酵大麦エキス」の農業利用を研究中。
食品用途以外での可能性を広げます。

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