ベッドの発明が人間の進化に影響を与えた可能性



私たちは夜眠りにつくとき、ベッドや布団などの寝具に横になって眠ります。床に直接寝転んだり、椅子に座ったまま眠ったりはしません。
ですが、このベッドで横になって眠るのは、人間以外の多くの動物と比較すると、珍しい行動でもあります。
巣をつくる小動物の場合は、巣の中にベッドを構えていることもありますが、基本的に大型の哺乳類はベッドで眠ったりはしないのです。
このベッドで眠りにつく、という行動が、私たちを人間たらしめた可能性があることが、最近の研究で明らかになっています。

ベッドを作るオランウータンと作らないヒヒの眠り

私たち人間は霊長類の仲間ですが、霊長類はみなベッドを作って眠るかといえば、もちろんそうではありません。私たちの眠るベッドに似た寝床を作るのは、オランウータンやチンパンジー、ゴリラなどに限られます。

この調査では、睡眠行動‐ベッドを作るか否か‐が異なる2つの種の睡眠を比較することで、睡眠が人間の進化に影響を及ぼした可能性を検証しています。
ベッドを作る動物としてはオランウータンが、 ベッドを作らない動物としてはヒヒが選ばれました。

12匹のヒヒと5匹のオランウータンを1~4か月かけて撮影し、睡眠パターンや脳活動をモニターした結果、オランウータンはヒヒよりも質の良い睡眠を取っていると結論付けられました。

David R. Samson, Robert W. Shumaker
Orangutans (Pongo spp.) have deeper, more efficient sleep than baboons (Papio papio) in captivity
American Journal of Physical Anthropology 157:421–427、2015
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ajpa.22733

良い眠りがもたらした進化

この調査では、ヒヒは外敵の危険がないときに、日中の多くの時間を座りながら浅く眠って過ごす、とも報告されています。それは翻って、質の良い睡眠によって、睡眠に充てる時間を減らすことができた大型の類人猿が、知能を発達させることに繋がったことも示唆しています。

面白いのは、初期のベッドは、良い睡眠を得るためのものではなかった可能性があるところです。

2300万年前から500万年前まで続く中新世で、類人猿は大型化しました。樹上生活を営んでいた祖先たちは、体が大きく重くなるにつれ、眠っているときでも木から落ちないようにするための「何か」が必要になりました。
このような経緯で、1400万年前から1800万年前に、私たちの先祖はベッドで眠ることを「発見」したと考えられています。
安全に眠るためのものであったベッドですが、これによって睡眠の質が向上し、脳機能が発達したとすれば、ベッドは大変な発明だった、と言えるでしょう。

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