人はなぜお酒を飲むのでしょう?



人はなぜお酒を飲むのでしょう?近年は過度な飲酒の害についてクローズアップされることが多いですが、お酒は有史以前から存在すると言われ現代まで続いている歴史のある飲料です。

 

お酒と日本の文化

アルコール飲料において最も歴史が古いものはワインとビールですが、ワイン醸造は今から6000年前、ビール醸造は5000年前には行われていました。日本においては、奈良時代には日本酒の製法が確立されており、927年に編纂された延喜式(法令集のようなもの)に麹を用いた酒の製法が記載されています。

この時代にはハレの日の食事として酒が必要不可欠なものでした。現代日本においてもお酒はハレの日の儀式や祭りには欠かせないものとなっています。例えば、新年にはお屠蘇を飲み、祝いの席では皆で乾杯をしますし、結婚式では三々九度を行い、お酒を飲み交わすことで約束事を固める風習も日本にはあります。

神聖な儀式のときに用いられるなど、お酒は日本文化にとって切っても切り離せない重要なものと言えるでしょう。

 

飲酒は共感を強め社会的な絆を強め笑顔を伝染させる

では、人はなぜハレの日や特別な場面でお酒を飲むのでしょう。人が古来よりお酒を飲み続けてきた理由のひとつとも考えられる効果が、東大の研究グループの実験(2018年)で確認されていますのでご紹介します。(*1)

 

東大の研究グループの発表によれば、近年の研究により「飲酒が他者との社会的な絆を強め、笑顔が伝染しやすくなること」が示されています。(*2,3,4)、そのうえで同グループは神経科学と薬理学のアプローチを組み合わせて、飲酒が共感に及ぼす効果とそのメカニズムの解明に取り組んだとのことです。

 

この研究では、マウスにアルコールを投与すると、仲間の痛みに対して強く共感様行動を示すことがわかりました。アルコールを投与されたマウスは仲間の痛みを観察したときに、まるで自身が痛みを受けているかのような神経活動を生じやすくなっているということが分かったのです。これは、アルコールが脳回路の興奮抑制バランスを調節することで「共感」を促した結果であると考察されています。

 

お酒を飲むことで、脳にどのような変化をもたらすのかは、まだまだ分かっていないことも多いようですが、飲酒が共感を強めること、社会的な絆を強めること、笑顔を伝染させることについては、これまでの我々の実体験からも同意できる方が多いのではないでしょうか。お酒を酌み交わすことで約束事を固める日本の風習とも合致するような気がします。皆さんもお酒を飲むことや飲み会の場をコミュニーケーションの方法の一つとして上手に活用してみてはいかがでしょうか。

 

 

【参考文献】

(1)Sakaguchi, T et al. Ethanol facilitates socially evoked memory recall in mice by recruiting pain-sensitive anterior cingulate cortical neurons. Nat Commun. 2018 Aug 30;9(1):3526.

 

(2)Kano, M. et al. Low doses of alcohol have a selective effect on the recognition of happy facial expressions. Hum. Psychopharmacol. 18, 131–139 (2003).

 

(3)Kirchner, T. R., Sayette, M. A., Cohn, J. F., Moreland, R. L. & Levine, J. M. Effects of alcohol on group formation among male social drinkers. J. Stud. Alcohol. 67, 785–793 (2006).

 

(4)Fairbairn, C. E., Sayette, M. A., Aalen, O. O. & Frigessi, A. Alcohol and emotional contagion: an examination of the spreading of smiles in male and female drinking groups. Clin. Psychol. Sci. 3, 686–701 (2015).


ライター紹介

岡野(おかの)

乳酸菌など有用な微生物の研究担当。
社内に眠る宝の山を検索中。

 

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