食品産業における乳酸菌は何を使って培養しているのでしょう?
近頃、乳酸菌を添加した商品を見る機会が増えてきました。以前は乳酸菌=ヨーグルトのイメージだったのが、サプリや飲料、お菓子、食品にも乳酸菌が添加されています。
乳酸菌添加食品が増えた要因の一つは、乳酸菌が体に良いという研究結果がたくさん出てきたからです。特に、日本においては死んだ乳酸菌にも機能性があるという研究結果や、その認知が広まったことから、様々な食品に乳酸菌(死菌)が添加されるようになってきました。
では、それらの乳酸菌はどうやってつくられているのでしょう?乳酸菌添加食品の原料表示を見ても、乳酸菌と書いてあるだけでその乳酸菌は何を原料に培養されているのかは一般消費者にはわかりません。わからないってちょっと恐い気もしますので、ここで簡単にご紹介したいと思います。
乳酸菌はどのようにつくられる?
乳酸菌は一般的に複雑な栄養要求性を持っています。栄養要求性とは微生物が増殖するために必要な栄養(ビタミンやアミノ酸、ミネラル)のことです。複雑な栄養要求性とは、乳酸菌株によって、増殖に必要な栄養が異なるということです。
食品として使わない研究や実験では、下記のMRS培地が広く用いられています。MRS培地は、非常に多くの栄養が含まれている培地であり、多くの乳酸菌はこの培地を使えば培養が可能です。ただ、価格も高いですし食品産業用には用いられません。
含有成分 | 含有量 |
---|---|
プロテアーゼペプトン | 10.0g |
肉エキス | 10.0g |
酵母エキス | 5.0g |
ブドウ糖 | 20.0g |
ポリソルベート80 | 1.0g |
クエン酸アンモニウム | 2.0g |
酢酸ナトリウム | 5.0g |
硫酸マグネシウム | 0.1g |
硫酸マンガン | 0.05g |
リン酸水素二カリウム | 2.0g |
MRS培地に含まれる栄養素(1Lあたり)
では、食品産業用の乳酸菌の培地には何を使っているのでしょうか?
実は、各社がそれぞれの乳酸菌株に合わせて培地組成を決めているので何を使っているのかは秘密になっていることが多いです。いわゆる動物性乳酸菌の場合、脱脂粉乳を使って培養することが多いようです。一方、植物性乳酸菌の場合は、酵母エキスやペプトンを主体とした培地を使っていることが多いようです。もちろん、食品に使えるものを使っているので安全性には問題ありません。
実は、麦焼酎の副産物である発酵大麦から「バーレックス」という培地用原料がつくられます。植物性乳酸菌の培養に適していて、皆さんが食べたことのある乳酸菌も、もしかするとバーレックスで培養されたものかもしれませんね。
ライター紹介
乳酸菌など有用な微生物の研究担当。
社内に眠る宝の山を検索中。
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