犬や猫は牛乳を飲めない?乳糖不耐症は本当か
昔は家で飼っている犬や猫に残り物を与えるのはごく一般的でしたが、最近では、犬や猫には専用の食べ物を用意する、という考え方が一般的になってきています。
牛乳もその1つで、最近では犬には犬用の、猫には猫用のミルクを与えるのは当然として、さらに幼獣用、成獣用、シニア用など、ペット用でも種類が分かれ、必要に応じて使い分けることができるようになりました。
犬や猫は乳糖を分解できないの?
犬や猫に牛乳を与えてはいけないのは、牛乳に含まれる乳糖を分解できないことが大きな理由の1つ。
乳糖とは糖の一種で、ラクトースという名前でも知られています。砂糖の主成分であるショ糖に比べると甘さは0.4倍程度の、あまり甘くない糖です。
乳糖は糖の一種なので、エネルギー源となる栄養素です。乳糖が食べものとして体に入ると、分解されてエネルギーとして働きます。乳糖の分解にはラクターゼという酵素が必要ですが、犬や猫には乳糖を分解する酵素を持たず、消化不良から下痢をするものがいます。
乳糖を分解できるか否かは犬や猫によって違いますが、分解できないものがいることが広く知られるようになってきたため、現在では犬や猫には原則として牛乳は与えないことになっています。
乳糖を分解する酵素の働きが悪い体質のことを、乳糖不耐症と言います。では、乳糖を分解できないとされる犬や猫は、乳糖不耐症なのでしょうか。
犬や猫は乳糖不耐症なのか
犬や猫が乳糖不耐症であるというのは、半分だけ正解です。
乳糖は特別なものではなく、哺乳類のお乳に含まれるごく一般的な成分。母犬や母猫が出す母乳にも含まれているものなのです。同じ種類の動物の乳糖なら問題ないというわけではなく、犬や猫も、赤ちゃんの頃は乳糖を分解することができるのです。
犬も猫も、お乳を飲まなくなれば乳糖を分解する必要がなくなるので、酵素は徐々に作られなくなります。すると、大人になったころには体質が変化し、乳糖を分解できなくなってしまいます。犬や猫はそもそも乳糖不耐症だというわけではなく、成長の過程で乳糖不耐症になるのです。体質の変化が原因なので、たとえ同じ種類の犬の乳、猫の乳を与えても下痢をする可能性があります。
大人になるにつれて乳糖を分解する酵素が作られなくなっていくのは、どの動物も同じ。私たちの中にも、子供のころは牛乳が飲めたのに、大人になったら飲めなくなった、という人が多くいます。牛の乳だから人間の体に合わないというわけではなく、大人になったので飲めなくなったのですね。同じように、人間の母乳であっても人間の大人が飲めば、下痢をする可能性があります。
赤ちゃんの犬、赤ちゃんの猫なら大丈夫?
ということは、赤ちゃんの犬や猫なら、牛乳を飲んでも大丈夫なのでしょうか?それはそれで、別の問題があります。
人間と同じように、犬や猫も他の哺乳類も、生まれてしばらくは液状の食事をとります。他のものを飲んだり食べたりはしないので、この時期に飲む物には成長に必要な全ての栄養素が必要な量だけ入っていなければいけません。
乳汁の成分は動物の種類によってだいぶ異なっています。例えばアザラシの仲間のお乳は濃いことで有名。短い授乳期間中に、寒さに耐えるための皮下脂肪を十分に蓄えるため、お乳には乳脂肪がたっぷり含まれています。
動物による乳汁の成分の違い(%)
動物 | 全固形分 | 脂肪 | 蛋白質 | カゼイン | 乳糖 | 灰分 |
---|---|---|---|---|---|---|
ウシ | 12.7 | 3.7 | 3.4 | 2.8 | 4.8 | 0.7 |
イヌ | 23.5 | 12.9 | 7.9 | 5.8 | 3.1 | 1.2 |
ネコ | – | 4.8 | 7.0 | 3.7 | 4.8 | 1.0 |
ヒト | 12.4 | 3.8 | 1.0 | 0.4 | 7.0 | 0.2 |
片岡啓(1970)各種哨乳動物の乳成分組成の比較
牛乳を基準とすると、犬の乳は脂肪とタンパク質は多め、乳糖は少なめ。犬と同じ肉食の猫の乳は脂肪とタンパク質は多めですが、乳糖は牛乳と等量です。人の場合はタンパク質がかなり少ない代わりに、乳糖がかなり多くなっています。
赤ちゃんで他に食べるものがない動物に、別の動物の乳を与えても、栄養が偏ってしまい、健康に成長することができなくなります。乳糖が分解できる赤ちゃんでも、やはり専用のミルクで育ててあげましょう。
日本人の多くは大人になると乳糖を分解する酵素の働きが悪くなりますが、一部大人になっても酵素が活発に働く人がいます。また、欧米人は、大人になってもこの酵素の働きが悪くならない遺伝的な性質があることもわかっています。
同様に、大人になった犬や猫が牛乳を飲めるかどうかは、その犬や猫の体質に左右されます。牛乳が好きな犬や猫は多いので、どうしても飲ませてあげたい場合は、犬や猫の体調を見極めながら、少量ずつ試すようにしましょう。
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