「脂肪味」は6番目の味覚
証拠となる神経を九州大学が新発見
「おいしいものは、糖と脂肪でできている。」という飲料CMのコピーが数年前にあったことを覚えている人もいるかと思います。このコピーのように、ラーメンやケーキ、脂ののった肉や魚などこってりした食べ物をおいしいと感じる人は多いと思います。
味覚とは人間の五感の一つであり、甘味、苦味、塩味、酸味、そしてうま味の5つ基本味に位置づけられていますが、近年、この5つに加えて脂肪味という味覚に注目が集まっています。
脂肪がおいしさに関与していることは皆さんも経験上納得できると思いますが、従来、脂肪は味覚に影響しているのではなく、食感に大きく影響を与えることでおいしさに寄与していると考えられていました。つまり、脂肪は味覚としては認められていない状態だったのです。
2018年に九州大学のグループが脂肪味に関する研究を大きく進展させました。脂肪に反応する味蕾細胞から脳に味を伝える神経を発見したのです。
この神経の発見は、脂肪味が第6番目の味覚である証拠になると言われています。
私たちは油脂を含む食品を摂取すると、唾液に含まれるリパーゼにより油脂を分解し脂肪酸を遊離します。この脂肪酸独自の味を検知するために味蕾細胞に存在するGPR120受容体が重要な役割を果たしていることが分かったのです※1。
また、脂肪味に敏感に感じることができるかどうかは健康に大きな影響を与えています。オーストラリアの研究グループの報告によると、脂肪味を敏感に感じる人は脂肪の多い食品を食べ過ぎない傾向がみられ、BMIも低かったとのことです※2。
脂肪は食品のおいしさに大きく寄与するとともに、人間の体にとって必要不可欠なものです。一方で、脂肪の摂りすぎはメタボなどの弊害をひきおこします。この脂肪味の研究が進めば、より健康的でおいしい食品の開発にもつながるかもしれませんね。
また、脂肪味に敏感になることもメタボの予防のために重要です。味を感知する味蕾は10日ほどで生まれ変わると言われています。低脂肪の食事をすることで脂肪味に敏感になることもできるようですので、高脂肪の食事を続けている方、BMIを気にしている方は、意識的に低脂肪の食事を続けてみてはいかがでしょうか?
参考文献
※1:九州大学ホームページ
脂肪酸が第6番目の基本味である証拠となる神経を新発見
-今後の摂食行動・消化吸収との関連解明や食品開発へ影響大-
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/316
※2:Br J Nutr.,104(1),145-152(2010)
ライター紹介
乳酸菌など有用な微生物の研究担当。
社内に眠る宝の山を検索中。
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