新鮮でも肉の生食を避けるべき理由



肉や魚、野菜などの生鮮食品を買うとき、鮮度は重要な見極めポイントになります。

肉にしろ野菜にしろ、もともとは生きていたものは、生き物でなくなった瞬間から劣化は始まります。私たちが鮮度の良い食品を好むのは、新鮮であるほど劣化していない、すなわち味が良く安全である、という意識があるからですね。

ここで気になるのが、「新鮮なものはおいしくて安全」が極端に解釈され、加熱して食べるべき食品が、「新鮮だから」という理由で生食するケースがよく見られるようになったことです。特に生の肉類は食中毒や重い病気になる可能性がある危険なものです。

 

 

新鮮でも肉を生で食べない方が良いのはなぜか

肉類を生で食べてはいけないとされるのは、傷みが早く腐りやすいからというわけではありません。例えばと畜したばかりの新鮮な肉であっても加熱するのが大原則です。動物は生きているときから、体の中に人間の体に有害なものを持っている場合があるからです。

肉の生食による食中毒・病気の原因となるのは、病原性の細菌、病原性のウイルス、寄生虫、の主に3つ。細菌・ウイルス・寄生虫のいずれも、動物が生きているときから動物の体内にあるので、肉が新鮮かどうかは関係ありません。これらは動物の体内では大きな病気を起こさないことが多く、肉になる前に動物の健康状態で判断するのは困難です。

 

 

もっとも多い細菌による食中毒

中でも細菌は、肉を生食による食中毒の主な原因となっています。細菌というと特別なもののように感じますが、食中毒を起こす細菌の多くは、動物の腸管によく見られる細菌です。また、腸管から体内に吸収され、血液に乗って運ばれるため、血液が集まる肝臓(レバー)にも多く存在しています。

肉の生食による食中毒の報告が多い細菌は、カンピロバクター属菌、サルモネラ属菌、病原性大腸菌など。カンピロバクター属菌は鶏の腸に多い、牛レバーに病原性大腸菌が見られるなど、種類によって多少の違いはありますが、鶏肉、豚肉、牛肉のいずれの食品からもこれらの菌が見つかっています。

カンピロバクター属菌、サルモネラ属菌、病原性大腸菌のいずれも、加熱することで無害化できます。どの肉であっても生食はせず、よく加熱することで安全に食べることができます。

 

 

豚肉に見られるE型肝炎ウイルス

豚肉の生食では、細菌による食中毒以外にも、E型肝炎ウイルス感染の危険性があります。

E型肝は、E型肝炎ウイルスに感染することでかかる病気です。感染しても症状がないままに終わることが多いものの、稀に重症化し、黄疸、食欲低下、腹痛などを起こします。中米~北アフリカ~アジアで、日本での感染例は少ないものの、過去には死亡例も見られます。特に妊娠中の場合は死亡率が15~25%と高くなります。

国立感染研究所の報告によると、7割前後の豚がE型肝炎ウイルスの抗体を持つことがわかっています。抗体を持っているということは、過去にE型肝炎ウイルスに感染した可能性が高いと言えます。

通常は抗体によってE型肝炎ウイルスは豚の体からなくなりますが、と畜時にもE型肝炎ウイルスを持ったままの豚も稀に見られます。E型肝炎ウイルスは、加熱することで無害化するので、加熱を前提とする限りは、E型肝炎ウイルスを持っていても安全に食べることができます。

 

 

寄生虫の危険性

肉の生食は、細菌、ウイルス以外に、旋毛虫, 有鉤嚢虫などの寄生虫の危険性も考えられます。

日本国内においては、これらの寄生虫に感染した豚や牛は、と畜時の検査で除外され、肉として流通することはほぼありませんが、海外でタルタルステーキなどの生肉料理を食べたことで感染した例が、少数ながら日本国内でも確認されています。

また、牛レバーの代替品として豚レバーを生食した人で、国産の豚レバー由来のアジア条虫寄生の症例も見られました。

これらの寄生虫に感染しても一般には症状は軽く済みますが、海外では脳への寄生例が確認されたこともあり、そうなると症状はより重篤に、後遺症にも留意する必要があります。

 

 

 


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