魚を生食する際に気を付けたい食中毒



寿司や刺身は、日本で人気のあるメニューです。魚を生食する文化は世界的に見ればマイナーなものですが、和食の認知の向上とともに、海外でも受入れられることが増えてきました。

肉は細菌感染や寄生虫などの食中毒の危険性が高く、基本的に生食できませんが、魚ではどのような食中毒に気を付けるべきなのでしょうか。

 

 

魚の生食で起こりがちな食中毒、腸炎ビブリオ

肉の生食による食中毒ほど目立って報道されることはありませんが、魚の生食が原因と思われる食中毒も毎年発生しています。

生の魚の食中毒として最もよく知られているのは腸炎ビブリオという細菌感染によるもの。集団感染を起こしがちなノロウイルスなどに比べると件数は少ないものの、毎年30~40件程度発生しています。

腸炎ビブリオに感染すると、激しい腹痛と下痢、嘔吐、発熱などを起こします。通常は数日で症状は治まりますが、小さい子供や高齢者など、体力がない人が感染すると、症状が重くなる場合もあります。

腸炎ビブリオは塩水を好む細菌で、真水で洗うことで死滅させることができるため、刺身へ加工する際に良く水洗いすることで食中毒を防ぐことができます。また、日本では魚の生食の歴史が長く、乳幼児や高齢者、病気の人は食べるべきでない、という意識が共有されていることが、魚の生食による食中毒の可能性を低くしていると言えます。

 

 

鯖などで見られる蕁麻疹

赤身の魚、特に鯖を食べたときに、蕁麻疹が出た経験を持つ人はわりと多いと思います。重い症状になると、発熱、下痢、嘔吐、顔・体の腫れなどの症状が出ることもあります。このせいで鯖が食べられなくなったという人もいるかもしれませんね。

細菌や寄生虫などの有害な微生物によるものではないですが、赤身の魚を食べて起こる蕁麻疹などの症状も魚による食中毒と言えます。

 

鯖などの赤身の魚を原因とする食中毒は食品アレルギーの症状にもよく似ていますが、これは原因物質が同じ「ヒスタミン」だからです。赤身の魚には、身の中にヒスチジンというアミノ酸が豊富に含まれています。ヒスタミンはこのヒスチジンが分解されることで作られます。

なお、ヒスタミンは加熱しても変化しないため、厳密には生魚でなくてもこの食中毒が発生します。

 

 

寄生虫による食中毒

肉の生食同様、寄生虫症の可能性もあります。

魚の生食による寄生虫被害では、激しい腹痛や吐き気などからアニサキス症がよく知られています。サケ、サバ、タラ、イカなどに寄生しており、寄生虫が生きたまま食べてしまった場合、胃壁や腸管などに潜り込んで激しい痛みを引き起こします。魚の生食による寄生虫被害件数が最も多いのがこのアニサキスによるものです。

アニサキスは長さ数センチの紐状で、肉眼で見ることができます。スーパーなどで切り身加工をした際には身の中に潜っていて、後になって外に出てくることも多く、パックで販売されている魚の表面を見るとたまに見つかることがあります。

調理前に見えていれば取り除くのは当然としても、生きていなければ食べても問題ないので、これらの魚を食べる際にはよく加熱することが大切です。

 

 

肉に比べると魚は傷みやすく、細菌や寄生虫などによる食中毒以外にも、腐敗による食中毒も注意したいところです。

特に刺身のような生ものは常温に置かず、新鮮なうちに食べられなければ加熱してしまうなど、安全に美味しく食べたいですね。

 


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