ヒアルロン酸
~肌の潤いに確かなエビデンス~



皆さんは、「肌に良いサプリ」と言われて、どのような成分を思い浮かべるでしょうか?

 個人的には、コラーゲン、ヒアルロン酸が有名だという印象ですが、実際には、コラーゲン、プラセンタ、ヒアルロン酸Na、植物発酵エキス(酵素)など定番素材に、セラミドやエラスチン、ケイ素など様々な素材があります1)

 

ちなみに「肌の潤いを保つ」機能性表示食品は、2019.10月現在、186品が受理されており、全体の約8%(全2337件)。そのうち、71件がヒアルロン酸Na、68件がグリコシルセラミドと、ほぼ二分しているものの、ヒアルロン酸Naが1位です。

そこで、今回は人気素材である「ヒアルロン酸」についてご紹介したいと思います。    

 

 

ヒアルロン酸とは?

植物や動物の体は無数の細胞で構成されていますが、その細胞と細胞の間を埋めて支える物質が必要で、これらを細胞外マトリックスと言います。

ヒアルロン酸は、その細胞外マトリックスを構成する重要な成分の一つです。

ヒアルロン酸は、N-アセチルグルコサミンとD-グルクロン酸という二つの糖のセットが、長~く繋がったグリコサミノグリカンと呼ばれるものです。分子量は数百万にもおよび,高い保水力と粘弾性を最大の特徴とします。この効果が肌の潤いやハリに効果をもたらす要因の一つと考えられています。

なお、ヒト試験では1日あたりヒアルロン酸120 ㎎から280 ㎎の摂取により皮膚水分改善効果および肌質改善効果が確認されています2-5)    

 

 

ヒアルロン酸を食べて効果があるのは何故?

元々、ヒアルロン酸は、膝関節への注射や、点眼剤の成分として用いられてきました。

細胞外マトリックスの重要な成分であるため、そういった用途でポイント的に効果を発揮するのは理解できますが、「食べたヒアルロン酸が肌に届くのか?消化されてしまうだけではないのか?食べて意味があるのか?」という疑問が生じます。  

この疑問に関して答えを出した論文がありますので、それも併せて紹介したいと思います。

 

ラットにヒアルロン酸を食べさせたところ、そのうちの12%が糞便に排出されていました。つまり88%が体内で何らかの形で吸収されていることが分かりました。

また人工胃液、人工腸液の中ではヒアルロン酸は分解されないことが分かりました。

そこで、ラットの盲腸を調べると、高分子のヒアルロン酸が低分子化していたことから、腸内細菌により分解されていることが分かりました。

 

次に吸収されたヒアルロン酸が皮膚に届いているかを見るために、ラットに食べさせるヒアルロン酸を、科学実験ではよく用いられる14C同位体で標識し、標識したヒアルロン酸が皮膚に現れるかをみたところ、摂取約6時間後から皮膚で検出されることが分かりました。

これらの結果から,食べたヒアルロン酸は腸内細菌により低分子化され,大腸から吸収されて血液に運ばれて皮膚に届くと考えられます。

 

ちなみに、4 糖以上つながったヒアルロン酸もリンパを介して全身に移行する可能性があるとのことです6)

科学的根拠も明らかなヒアルロン酸は今後も様々なサプリメントに応用されていくことが期待できます。

 

1)2019/2/26特集 コラーゲン, デルフィニジン-3-ルチノシド, ヒアルロン酸, プラセンタ, 健康産業新聞

2) Sato T et al., Aesthetic Dermatology, 2002 ; 12 : 109-20

3) Sato T, et al., Aesthetic Dermatology, 2007; 17: 33-9

4) 吉田拓史ら, 新薬と臨床, 2009 ; 58(8) : 143-55

5) Watanabe M et al, Jpn Pharmacol Ther,2015 ; 43(1) : 57-64

6)木村守,Functional Food Research , 2018; 14: 30-35  

 


ライター紹介

中村彰宏

技術士(生物工学)

発酵大麦エキスの研究一筋。
エキスの培地利用の可能性を探っています。

 

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