認知症と生活習慣の関係
2020年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックの年です。
これに続き2025年には大阪万博も開催が決定しており、明るいニュースが続いていきますが、その陰に隠れて「2025年問題」が取りざたされています。
これは、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる年であり、4人に1人が75歳以上という超高齢化が急速に到来することを意味します。これに伴って、医療・介護・年金など様々な問題が予想されますが、今回は、その中でも認知症についてお話したいと思います。
内閣府によりますと、65歳以上の高齢者の認知症の有病率は2012年には7人に1人(15.0%)でしたが、2025年には5人に1人(20.2%)、2060年には3人に1人(33.3%)となるとの推計が出ています(1)。
認知症では、記憶障害や見当識障害(場所や日時が分からなくなる状態)に伴い、不安、抑うつ、徘徊、不眠などの症状が見られます。
現在、様々な研究が行われており、複数の危険因子が分かってきました。薬の研究開発も盛んに行われていますが、その進行を防ぐことができるかもしれないという報告が次々に出てきています。
不整脈が認知症のリスクを高める
一見、認知症と心臓の病気とは関係がなさそうですが、心房細動(不整脈の一種)患者はそうでない人に比べて認知症になりやすいということがオランダの研究者によって発表されました(2)。
20年という長い経過観察の結果、心房細動患者はそうでない人に比べて1.3倍認知症になりやすいという結果が得られています。欧米の学会では、認知症を予防するために抗凝固治療を適切に行うべきとの見解が示されており、日本でも認知症予防のために不整脈を治療するという人が増えているそうです。
生活習慣病の管理が進行を止める
高血圧、糖尿病、肥満といった生活習慣病を患っている人は、アルツハイマーを発症するリスクが高くなるとの報告があります(3)。
一方、フランスの研究チームによると、アルツハイマーと診断された患者に対して、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や喫煙を管理すると、全く管理しなかった患者に比べてアルツハイマーの進行が有意に抑えられたとのことです(4)。
この論文の凄いところは、アルツハイマーの患者でも生活習慣病をしっかり管理することで進行が止められることが分かったという点です。一度かかったら進行し続けると思われていたアルツハイマー病の進行が止められる可能性が見えてきたということが患者さんにとっては光明となるのではないでしょうか。
認知症予防のためにはどうすればよい?
国立長寿医療研究センターによりますと、「コグニサイズ」という運動プログラムが推奨されています。英語のcognition(認知)とexercise(運動)を合わせた言葉で、運動と頭の体操を同時に行うことが認知症予防に効果的なのだそうです。
例えば、しりとりをしながら運動を行うなど、具体例が示されていますので、是非一度ご覧ください。(https://www.ncgg.go.jp/ncgg-overview/pamphlet/pamph-koguni.html)
生活習慣を見直せば万病の予防になります。適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠をとるなど、快適なセカンドライフに向けた取り組みを始めましょう。
- 平成29年版高齢社会白書
- de Bruijn, R. F., Heeringa, J., Wolters, F. J., Franco, O. H., Stricker, B. H., Hofman, A., … & Ikram, M. A. (2015). Association between atrial fibrillation and dementia in the general population. JAMA neurology, 72(11), 1288-1294.
- Luchsinger, J. A., Reitz, C., Honig, L. S., Tang, M. X., Shea, S., & Mayeux, R. (2005). Aggregation of vascular risk factors and risk of incident Alzheimer disease. Neurology, 65(4), 545-551.
- Deschaintre, Y., Richard, F., Leys, D., & Pasquier, F. (2009). Treatment of vascular risk factors is associated with slower decline in Alzheimer disease. Neurology, 73(9), 674-680.
ライター紹介
主力商品「大麦乳酸発酵液ギャバ」の開発者。
次のヒット商品を開発中。
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