昔の人は温かい?過去200年で平熱はどう変わった?



皆さんは自分の平熱がどの程度か、把握できていますか?

熱が出る病気で最も身近なのは風邪ですが、水ぼうそうや膀胱炎など、風邪ではない病気の時も熱が出ることは多くあります。熱が出たら体に何か異常が起きているしるし。自分の平熱を知っておくと、ちょっとした微熱でも病気への対処が素早くできるのでお勧めです。

さて、平熱といっても人によって35度台の人もいれば37度台の人もいますが、36度台がもっとも一般的と言われていますね。でも平熱が36度台というのは、最近に限った傾向である可能性が出てきました。昔の人はもっと体温が高かったかもしれない、というのです。

 

 

私たちの体は冷えてきている?

Not so hot: US data suggest human bodies are cooling down

こちらの記事、タイトルの通りですが、人間の体温は以前より冷えてきている、というもので、2020年にオンライン科学誌のeLifeで発表された論文1)を根拠にしてます。

 

論文を発表したのは、スタンフォード大学の Julie Parsonnet氏が率いるチーム。

アメリカにおいての調査ではあるものの、1860年代以降に行われた3つの調査結果から、アメリカ人の体温は、10年ごとに平均して0.03℃低下し続けていると結論付けています。

0.03℃というと微々たる差のように思えますが、19世紀の初めから20世紀の終わりまでの約200年で、女性では0.32℃、男性では0.59℃もの差が生じているとか。

 

 

体温が下がった理由は、健康になったから?

学術論文ではないものの、日本でも民間企業が体温に関する調査をすることがあり、実は日本人の体温も過去よりも低くなっていると考えられています。

その原因として挙げられるのが、体を動かす機会が減ったことによる筋肉量の減少、空調の整備による体温調節機能の弱まりなど。どちらかといえば、不健康な要因が、体温低下の原因とされています。

ですが、今回紹介した研究では、逆に現代人が健康になったために体温が下がった、と全く逆の可能性が指摘されています。

仮に約200年前にタイムスリップすることができたとして、不便や不快を感じることは何だと思いますか?移動手段が限られていることや、情報通信が未発達なのも気になりますが、最も心配なののは病気ではないでしょうか。

特に感染症は、戦後から現代までに、感染症が原因の死者数が激減したことからもわかる通り、昔はもっと身近にありました。

 

 

感染症にかかると、重症化して死んでしまう人もいますが、慢性的な症状として残り続けることもあります。すぐには死にませんし、一見元気ではありますが、慢性的に病気ではあるので、多少の熱もあったことでしょう。

200年前の人の平熱が高かったのは、慢性的に感染症に罹患している人が多かったからではないか、とこの論文では推測しています。別の科学者から反論も出ているので、あくまで推論の域を出ないものですが、もし仮説が正しければ、私たちの平熱が下がったのは、健康になったから、と言うことができそうです。

平熱が低いと何かと不健康なイメージがありますが、もしこの仮説が正しかったとしたら、まったく逆なのかもしれませんね!

 

1)Protsiv, M., Ley, C., Lankester, J., Hastie, T. & Parsonnet, J. eLife 9, e49555 (2020).

 


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