糖尿病とアルツハイマー型認知症
アルツハイマーの原因物質
高齢化が社会問題となっている日本。社会の高齢化に伴って、認知症患者数も年々増え続けており、2025年には高齢者の5人に1人が認知症を罹患するという推計値が、厚生労働省から発表されています。
認知症とは、何らかの後天的な理由によって脳の細胞の数が減ってしまったり、働きが悪くなったりして、認知機能や運動機能に様々な障害を来し、日常生活に支障が出ている状態です。1つの病気のことを言うのではなく、このような障害が起こる複数の病気を、まとめて認知症と呼んでいます。
認知症には様々な種類があり、原因を取り除くことで治療が可能な正常圧水頭症のようなものもありますが、認知症患者の50~60%を占めるアルツハイマー型認知症には、残念ながら根本的な治療法はまだ見つかっていません。
このアルツハイマー型認知症は、治療法や予防法などは確立されていないものの、原因については研究が進んでおり、アミロイドβという異常なタンパク質が蓄積することで発症するという説が現在主流になっています。そして、アミロイドβの蓄積には、糖尿病が関係することもわかってきました。
糖尿病とアルツハイマー
糖尿病とアルツハイマーの関係について説明する前に、人間が体を動かすための仕組みについて解説しましょう。
まず、人間はエネルギーがなければ活動することはできません。エネルギーは食事によって補われますが、食事をしていないときも、肝臓からは一定量の糖分が供給されており、それを体の各組織で分解したときに得られるエネルギーによって人間は活動することができます。この糖分を分解してエネルギーを得る働きをするのがインスリンというホルモンです。
人間は寝ているときでも様々な組織が動いていますので、肝臓からの糖分の供給も、それを分解するインスリンの分泌も、常時行われています。そして、食事などによって一時的に血糖値が上がれば、それに合わせてインスリンも通常より多く分泌されることになります。ただし、インスリンは糖分を分解して血糖値を下げるため、必要以上に存在していると低血糖状態となり、人間は活動できなくなってしまいます。そうならないために、インスリンはインスリン分解酵素によって次々と分解されるようになっています。
このインスリン分解酵素は、アミロイドβを分解する作用も持っており、インスリンの分解を行っていないときはアミロイドβの分解を行います。働きとしてはインスリンの分解が優先しますので、インスリンの分解が終わらなければ、アミロイドβは分解されずに蓄積されることになります。
さて、糖尿病は、インスリンの量や働きに異常が生じ、常に高血糖状態となる病気です。また、糖尿病予備軍の人たちも、血糖値は常に高い状態になっているでしょう。
高血糖状態ということは、インスリンも常に過剰な状態になっていますので、インスリン分解酵素もインスリンの分解だけをずっと行わなければなりません。つまり、高血糖状態が続く限り、アルツハイマーの原因となるアミロイドβも蓄積されていくということになり、これが糖尿病がアルツハイマーと関係するとされる所以なのです。
糖尿病にならない生活習慣
アルツハイマーでなくても、糖尿病は恐ろしい病気です。一旦発症すると完治することがなく、一生食事療法を続けたり、インスリン注射を打つことになったりと、生活も煩わしいものになるでしょう。
この糖尿病を予防するためには、まず何よりも肥満にならないことが重要です。糖尿病には遺伝も関係していますので、必ずしも肥満の人だけがなる病気というわけではありませんが、肥満の人に起こりやすいというのも事実です。
運動することももちろん大事ですが、まずは手軽に食事から変えてみてはいかがでしょうか。変えると言っても本当の病院食のようにする必要はありません。(イモ・マメ以外の)野菜を多くとる、決まった時間にゆっくり食べる、調味料をかけすぎないなど、いつもの食事を少し工夫して食べ過ぎを防ぎ、糖尿病にもアルツハイマーにも配慮した生活を心がけていきましょう。