未病と乳癌予防研究の最前線



医療費が年々増加しています。 2018年の医療費は42.6兆円といわれ、2014年から見ると4年で2.6兆円程増加しています。

政策としての医療費削減はもちろんのこと、一人一人が健康に快適に幸せに暮らす上でも病気にならない、あるいは病気になるのを遅らせることはとても大切なことです。

<厚生労働省プレスリリース>

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000550869.pdf 

 

 

未病とは?

人の健康状態は、ここまでは健康、ここからは病気と明確に区分できるわけではなく、健康と病気の間で連続的に変化しており、その状態を「未病」といいます。

未病を改善するためには、特定の病気になってから治療するのではなく、普段から自身の状態を把握することが重要です。

神奈川県ではすでにその取り組みを開始しており、「マイME-BYOカルテ」というものを活用しています。

これは「デジタルヘルス」と言われる分野の取り組みであり、お薬や健康診断の結果、日々の体重・血圧・歩数、母子手帳の記録など、生涯にわたる様々な種類の健康情報を記録し、管理することができます。

これによって、自身の健康状態を観測し、日々、食事などに気をつけて、未病~健康な領域で過ごすことを狙いとしています。スマホなどの簡易的なデバイスの発展による大きなメリットであると言えます。

<神奈川県HPより>

https://www.pref.kanagawa.jp/docs/mv4/cnt/f532715/p1002238.html

 

 

現在の医療制度でリカバーできないもの

ただし、遺伝的な疾病のように、このような取り組みでリカバーできないものがあることも現実問題としてあります。その際は、現在の医療制度を活用することになります。

筆者自身が感じる喫緊の課題としては、乳癌が挙げられると思っています。乳癌は女性で罹患者数が最も多い癌です。

<国立がん研究センター がん情報サービス>

https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html

<公益財団法人日本対がん協会>

https://www.jcancer.jp/about_cancer_and_knowledge 

 

 

乳癌発症メカニズム

乳癌では、まず乳管内で細胞が異常増殖し、いわゆる良性の腫瘍となります。それが進行して悪性化し、乳管の外に出たものが血液の流れにのり、他の臓器へと移動していきます。これが転移です。

乳癌に関しては、乳癌そのものではなく体の他の臓器への転移や浸潤により死に至るケースが多いと言われています。

既にこの時点で結論は出ていますが、神奈川県が進めている未病に関する取り組みと同様、「予防する」ことが最も重要となります。

 

 

乳癌予防研究の最前線

しかし、現行の医療制度が抱える問題点として、悪性化したものについて保険が適応されますが、良性のものへの適応がないということがあります。それはなぜか。「乳癌の発症を抑える研究手法がなかった」ということも一因として挙げられます。

「なかった」ということは、「今はある」いうことです。

今年1月に公開された乳癌の予防研究に関する研究論文を紹介します。  

 

従来の乳癌に関する研究は、悪性化した癌細胞をマウスなどの実験動物に移植して効果のある薬剤のスクリーニングなどを行っていましたが、これは、あくまで悪性化したものに対する効果を見るもので、予防に繋がるものではありませんでした。

伊東らは、これに対して乳癌を発症する実験動物を開発しました。

これにより前述した、細胞の異常増殖から、良性の腫瘍、悪性化、転移・浸潤を観測することが可能になり、薬や食品を与えて、進行を遅らせるかどうかを見る、つまり乳癌予防に効果のある成分を探索することを容易にしました。

以下、原文です。

“Estrogen Induces Mammary Ductal Dysplasia via the Upregulation of Myc Expression in a DNA-Repair-Deficient Condition” https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(20)30004-3

 

ただし、これを人に適応するためには最終的に大規模な臨床試験などが必要になります。その際には、乳癌になるリスクのある人に対し、効果のある成分を与える群、与えない群を設けた際の倫理的な課題など、クリアしなければならない課題は山積しています。

しかし、乳癌研究に関して新しい光が差し込んだことだけは確かです。 これからの発展が大いに期待されます。

 


ライター紹介

中村彰宏

技術士(生物工学)

入社してから15年、発酵大麦エキスの研究一筋。 より幅広い分野でのエキスの可能性を探っています 。

 

 

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