ロコモの予防と健康寿命 -発酵大麦エキス由来成分「ピログルタミルテトラペプチド(pEPYP)」が膝関節の自覚症状に及ぼす効果について-
健康寿命とは
日本人の平均寿命は2019年のデータによると、男性は81.41歳、女性は87.45歳で、女性の過半数が90歳まで生きる時代だそうです。
ところで「健康寿命」という言葉を御存知でしょうか?
健康寿命とは「元気に自立して過ごせる期間のこと」で、つまり介護を必要としない状態での寿命と言えます。この健康寿命、男性は72.14歳、女性は74.79歳と言います。従って、男性は9.27年間、女性は12.66年間、日常生活に制限がある、つまり何かしらの介護が必要となる期間があるそうです。
日本整形外科学会は運動器の障害によって日常生活に制限をきたした状態をロコモティブシンドローム(略してロコモ)と提唱しました。厚生労働省は介護が必要となる原因としてロコモを挙げ、ロコモという概念とともに、その予防の重要性が広く知られるようになれば、健康寿命の延伸につながると考えています。
ロコモに効果的な成分を発酵大麦エキス中に発見
そこで我々は発酵大麦エキス中に、ロコモに効果を示す成分がないか、探索を行ったところ、まず、軟骨の分解を促進する酵素(MMP-13)の産生を抑制する成分として、新規物質であるピログルタミルテトラペプチド(pEPYP)を発見しました。
細胞試験の結果、ヒトの軟骨細胞にpEPYPを与えると、MMP-13の発現が抑制されました1)。

pEPYPがMMP-13 mRNA発現量に与える効果

pEPYPがMMP-13 たんぱく質発現量に与える効果
また、ロコモは炎症作用の一種ですが、IL-10と呼ばれる成分は抗炎症成分で、これが増加することによって炎症を抑えられると考えられます。ヒトのT細胞にpEPYPを与えるとIL-10の発現が促進されました1)。

pEPYPがIL-10 mRNA発現量に与える効果

pEPYPがIL-10 たんぱく質発現量に与える効果
ヒトが摂取するとどうなる?
ピログルタミルテトラペプチド(pEPYP)を含む食品をヒトに摂取してもらったところ、12週間後にJKOM (変形性膝関節症患者機能評価尺度)の「膝の痛み・こわばり」に関する8つの質問の合計点において、有意に改善しました。つまり、pEPYPを摂取することにより、膝の痛みやこわばりを和らげる作用が示唆されました2)。

膝関節に痛みや違和感のあるヒトがpEPYPを摂取した際のJKOM痛み合計スコア
また、試験参加前に、膝の痛み・こわばりが比較的軽く、不快感が少ないヒトに限定してデータの解析を行うと、JKOMアンケートの合計点、痛み・こわばりの合計点、生活の質(QOL)の合計点において、いずれも有意に改善しました。

0週目のJKOM合計スコア平均点26点をもとに2層に分けた時の層別解析結果
なお、これらの結果は特許を取得しており、新規物質を使用した弊社独自の新たな技術です3)。
これからも私たちはFBEの持つ未知の健康機能を探索し、皆様の健康に寄与するような研究を進めていきたいと思います。
引用文献
1)上原絵理子,外薗英樹, ピログルタミルペプチドのIL-10産生促進およびMMP-13産生抑制効果, 食品科学工学会誌, 67(10); 368-375 ; 2020
2)上原絵理子, 外薗英樹, 稲場守, ピログルタミルテトラペプチド(pEPYP)含有食品の
膝関節の自覚症状に及ぼす効果―ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験―, 薬理と治療, 48(7); 1207-1215 ; 2020
3) 【特許番号】特許第6795670号 【発明の名称】テトラペプチド化合物及びその用途
ライター紹介
機能性評価のエキスパート。
健康に役立つ、確かなエビデンスを追究します。
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