発酵大麦エキスは腸内菌叢を改善するか?
腸内には様々な菌が、人それぞれ固有のバランスで住んでいます。
これを菌叢と呼びます。
体調が変化すると菌叢が変化するのか?
菌叢が変化すると体調が変化するのか?
その因果関係は明らかになっていませんが、いくつかの相関関係は報告されており、腸内菌叢を良い状態に保つことは健康維持に役に立つと考えられます。
先日、当サイトの記事で、発酵大麦エキスの摂取が腸管内の短鎖脂肪酸濃度を増やし、腸管免疫を賦活する効果があることを紹介しました(https://www.hakko-omugi.jp/?p=6132)。
発酵大麦エキスにはビフィズス菌や乳酸菌などの有用微生物を増殖させる効果があることが分かっており1)、また、人の腸内において短鎖脂肪酸の一部はこれらの菌が生産することも分かっています。
そこで、発酵大麦エキスを摂取すれば、腸内の有用微生物も増えるのではないか?
2週間、発酵大麦エキスを摂取し前後のビフィズス菌と乳酸菌を調べました。
こちらがその結果です(表1)。全体の解析では有意差は見られませんでした。

表1 ビフィズス菌(左)、乳酸菌(右)が腸内菌叢に占める割合
一方、日常的にヨーグルトなどの乳酸菌製品を食べる習慣のある人とない人の2群に分けて、発酵大麦エキス摂取前後で比較したところ、乳酸菌製品を摂取する習慣のある人の乳酸菌が増加する傾向が見られました(表2)。

表2 ビフィズス菌(左)、乳酸菌(右)が腸内菌叢に占める割合
麹が新しいプレバイオテクスとして注目されつつあります2)。大麦を麹菌と酵母で発酵してできた発酵大麦エキスにも、そのような効果があることが期待されます。
今後も発酵大麦エキスの新しい機能として研究を進めていきたいと思います。
1)古田吉史ら 生物工学会誌 第88巻 第3号 114–120.2010 2)Y.Okazaki et al.Biosci Biotechnol Biochem 2013;77(1):53-7 Burdock fermented by Aspergillus awamori elevates cecal Bifidobacterium, and reduces fecal deoxycholic acid and adipose tissue weight in rats fed a high-fat diet
ライター紹介

技術士(生物工学)
発酵大麦エキスの研究一筋。
エキスの培地利用の可能性を探っています。
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